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この考えがネガティブかどうかは人によって異なる【心理学】

福島県の医学部で学生教育をしながら、心理カウンセラーをしたり、研究をしたり、YouTubeの運営をしたりしてるあおきしゅんたろうです。

最近、枯山水を見ながらいくつかの気づきがあったことを話していましたね。

やはり心理学的な視点に立ち返り、私の思考や理論、研究に生きてくるなと感じます。

それと同時に、じぶんの物事のとらえ方はかなり心理学に依存しているなとも思います。今日は認知行動療法について考えていました。

認知行動療法は、エビデンスベースのアプローチと言われており、認知科学と行動科学の知見を活かし、精神疾患や精神的な悩みの治療や解決を目指す方法です。

認知行動療法は、マニュアルに基づいて実施します。このマニュアルの基本は、人間の普遍的な原則や研究に基づく理解です。

例えば、ベックの認知療法では、「ネガティブな考えが症状を引き起こす」という理論があり、これは研究で確認されています。

また、「回避行動」を取ると、うつ症状が悪化し、生活が困難になるというのも、研究でわかっています。

これらは一般的な原則ですね。ネガティブな考えや回避行動などは、セラピーの際には、クライアントさんの意向に沿ってカスタマイズし、実施します。ここで、カスタマイズするポイントが重要だと感じています。

なぜなら、「ネガティブな考え方の内容は人それぞれである」が、それが何らかのパターンとして現れると、うつ症状につながると思います。しかし、これを十分に理解せずに分析しようとすると、自分の主観に囚われてしまい、こちら側がネガティブかどうかを判断してしまう可能性があります。

じぶんの主観が影響してセラピーをすると、クライアントからは「そうじゃないんだけどな」という反応が出るかもしれません。結果として、セラピーがうまくいかない可能性もあります。

エビデンスとしては、ネガティブな考えと気分が連動し、精神的な問題が続いてしまうことは確かです。しかしその内容や中身(コンテンツ)は、人それぞれ異なると思います。

私が最近感じているのは、思考のコンテンツの良しあしを科学的に非常に厳密に基づいて明らかにしようとすると、どういう考え方(あるいは思想)がネガティブに作用するのかを非常に厳密に考えなければいけなくなるということです。

しかし、考えに良いも悪いも本質的にはないので、その人にとって何がうつを引き起こすのか、ということが重要というのが認知行動療法の発想なのだろうと思うのです。

他方、そういった科学的なアプローチも重要なのですが、全てが絶対厳密な科学的なものばかりではないな、と私は感じています。

人間の原理原則として大まかなことは心理学で言えますが、中身については人それぞれ大いに違う部分があり、それはその人の価値観によるものです。

セラピーをする時は、概ねの方向性はわかっていても、その実体、中身については、かなり個別に合わせていかなければいけないところがあります。実際には完全にエビデンスだけに基づいて進めるわけではないのです。

原則の部分はエビデンスベースであるほうがいいですが、具体的な思考の内容の良しあしについてを厳密なエビデンスベースドというのは難しいんだろうなとも思います(スキーマ療法など、一定の方角を示してくれるものもあると思います)。

これがセラピストの力量によるところが大きいと感じています。

認知行動療法では、クライアントさんの思考パターンや行動パターン、そしてそれらが持つ機能と意味を考慮しながら進めていかなければなりません。

しかし、セラピスト自身にも道徳感や価値観が存在しますから、それが干渉してくることもあるでしょう。心理的ウェルビーイングの概念も、大多数の人にとって良いものなのですが、すべてのひとに絶対的にそうだとは言えません。

カウンセリングやセラピーの結果、どうなるのが良いのかは人によって相当違うでしょうし、その個別最適化も重要です。ウェルビーイングやうつといった単一でかつ共通性の観点からだけでなく、多様な方法でアウトカムを取っていくべきだと思います。

もちろん既存の認知行動療法やウェルビーングの概念が悪いわけではなく、否定するわけではなく、それも一つの可能性として現状では最有力ですが、人によってうまくいかないこともあるなあという実感もあります。

行動療法で考えた時、機能で考えた時に良くなる人もいれば、それに対して否定的に思う人もいるのだと思います。また、セラピストから見ると、それが機能していないと考える場合でも、自分が大事にしたいことは変えたくない、という方もいらっしゃるでしょう。

どんな場合でも、クライエントさんとしっかり話をし、進めていく必要があります。

最後に、最近、自分の思考の内容について考えていました。

自分としては違うなと思ったとしても、社会的な規範によって規定されますし、その人が生まれ育った家庭環境の中であれば、それを包括する文化や土地であれば、そう思うことは妥当だったということが多くあります。

特定の哲学や宗教的な話、好きなアーティストの思考、学校で学んだこと、周囲の人々の話題の内容、あるいは自分の経験など、そういうものによって基本的に人の思考や価値観が育まれていくのは間違いないと思います。

しかし、そういったバックグラウンドを持つ自分と他人との会話で、どうやって折り合いをつけるのか、また、何が最善かを考える時、科学だけではやはり解決できない部分があるよなと感じました。

多数派が何を良しとするか、これは考えることはできますが、それが人類にとって合理的かどうかは結局わからないと思いましたし、「その人」にとってポジティブなものであるのかはわからないとも思います。

私にとってはネガティブな考えでも、その人にとってはポジティブであることもあります。

その思考の内容や考え方について、どう捉えていくのが良いのかは難しい話です。幸せの意味も、人それぞれ違うのはカウンセラーとして理解していますが、何が良いか悪いかをしっかり自分で考えなければいけないと再認識しました。

自分が間違っていると思い込んでいたことも、様々な物事の価値判断基準を学ぶにつれて、新しい発想が生まれ、納得できることもありました。

そういうことを考え始めると本当に終わりがないですね。だから基本に立ち返ると、思考がうつや他のネガティブな状態をどのように機能させているかを考えることが大切だとも改めて感じました。

ちょっと難しい話でしたが、自分の考えを整理するきっかけとして、もう少し考えをまとめ、よりスマートに説明できるようになりたいと思います。

認知行動療法も、基本的には理論的な部分がありますが、それをうまくクライアントと話し合い、問題や不幸せな状態をどのように機能させていくか、それにはその人の経験や価値観、哲学など、多くの要素が影響しています。

それらについては科学的にだけでは完全にはわからないので、たくさんの物事を勉強し、多くを学び、応用できるようにしなければいけないと思いました。

それでは、最後までお付き合いいただきありがとうございました!

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筆者 あおきしゅんたろうは福島県立医科大学で大学教員をしています。大学では医療コミュニケーションについての医学教育を担当しており、臨床心理士・公認心理師として認知行動療法を専門に活動しています。この記事は、所属機関を代表する意見ではなく、あくまで僕自身の考えや研究エビデンスを基に書いています。

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