見出し画像

うつ病の原因は「こころが弱い」せい?【心理学】

福島県の医学部で学生教育をしながら、心理カウンセラーをしたり、研究をしたり、YouTubeの運営をしたりしてるあおきしゅんたろうです。

「うつ病はこころが弱いせいで起こる」と思ったことはありませんか?

これは大きな誤解です。しかし、うつ病に関するこういった誤解や偏見が日本でも存在することは事実です。

そこで本記事では、「うつ病はこころの弱さの表れ」という考えがなぜ生じているかを考え、正しい理解を深めるために必要なポイントを解説します

なぜこころの弱さの表れと考えてしまうのか?


「うつ病はこころの弱さの表れ」と考えてしまう理由はいくつかあります。

情報不足と誤解 精神疾患についての誤解と情報の欠如は一般的な問題であり、これが偏見やスティグマを生み出します。人々がうつ病を理解していないため、その症状(悲しみ、活力の低下、興味喪失など)を「弱さ」と解釈してしまうことがあります。

文化的な価値観 日本の文化では、強さ、忍耐力、個々の責任が高く評価されます。このような価値観の中では、うつ病のような精神疾患を「弱さ」や「失敗」と捉える傾向があります。

見えない病気への理解の難しさ うつ病は身体症状が必ずしも明確ではない「見えない病気」です。これが理解を難しくし、うつ病を「こころの弱さ」とみなす誤解を生む可能性があります。

自己責任論 社会には個人の状態や結果はその人の選択や努力によるものとする考え方が広く存在します。この視点からは、うつ病は個人の努力不足や意志の弱さと誤解されやすいです。

これらの理由から、うつ病を「こころの弱さ」とみなす考え方が生まれますが、これは科学的に誤った解釈で、大きな誤解です。

うつ病はなぜ起こる?

うつ病はこころの弱さとは無関係で、誰にでもなる可能性があります。生物学的、心理的、社会的な要素が複雑に絡み合って引き起こされる病気です。

たとえば、うつ病によって起こる脳内伝達物質の変化は人間ならば誰しもが経験しますし、常に起こっています。

特に神経伝達物質と呼ばれる、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどは、脳内での情報伝達を助ける役割を果たしており、そのバランスが崩れると気分や行動に影響を及ぼします。これはこころの弱さと言えるでしょうか?

長期的なストレスや人間関係の問題、失業、病気、経済的な困難など、生活環境の厳しい状況もうつ病のリスクを高めます。これらの状況は、脳の化学的なバランスを崩し、うつ症状を引き起こすことがあります。

さらに、特定のからだの病気(例えば、心疾患、脳卒中、がん、糖尿病など)や特定の薬物の使用もうつ病のリスクを高めます。

このように、うつ病は「こころの弱さ」が原因で起こるわけではありませんし、単なる「気持ちの持ちよう」や「こころの強さ」「ガッツや根性」で克服できるものではありません

うつ病は、複雑な要素が絡み合う結果として発生します。脳内の神経伝達物質のバランスや、厳しい生活環境、からだの病気や薬物の使用もうつ病のリスクを増加させますが、これらは全て、こころの弱さとは無関係です。

「うつ病がこころの弱さで起こる」と考えるデメリット


さらに、うつ病が「こころの弱さ」によって起こると考えることで、非常に多くのデメリットが生じます。以下がその典型的な例です。

偏見の増大 この考え方は社会的な偏見を増大させます。うつ病は、個人のコントロールを超えた要因によって引き起こされる可能性があります。それを「弱さ」と決めつけることは、うつ病を抱える人々に対する理解を妨げ、必要なサポートを求めるのを躊躇させてしまう可能性があります。

治療が遅れる うつ病を「こころの弱さ」と誤解すると、その人が適切なサポートを受けるのが遅れてしまいます。うつ病は薬物療法や認知行動療法など、様々な科学的証拠に基づく治療法があります。しかし、「弱さ」とみなされてしまうと、それらを受け入れるのが難しくなるかもしれません。

自尊心の低下 「うつ病=こころの弱さ」という見方は、自己評価や自尊心を低下させる可能性があります。うつ病を抱えている人々は、自分自身を「弱い」と見ることでさらなる自己否定的な思考に陥り、うつ病の症状をさらに悪化させることがあります。

サポートの欠如 この誤解によって、うつ病の人々が周囲からのサポートを受けるのを難しくします。家族や友人も、うつ病を「こころの弱さ」と捉えてしまうと、どのようにサポートすれば良いのかを理解するのが難しくなります。

こうしたデメリットのため、うつ病を「こころの弱さ」と捉えることで、本人や周囲に大きな悪影響を及ぼす場合があります。

うつ病は「こころの弱さ」ではなく、実際の病気です。

うつ病は誰にでも起こり得る疾患であり、専門的な治療が必要となります。あなた自身、またはあなたの周りで「もしかして、うつ病?」と感じた場合は、専門家に相談するのもひとつの手なのかなと思います。

うつ病についての誤解が減り、適切なケアと支援を受けられる人が少しでも増えたらいいなと願っています

それでは、最後までお付き合いいただいて、ありがとうございました!

もし記事に共感していただけたら「スキ」ボタンを押してくれたらうれしいです。サポートしていただけたらもっと嬉しいです、サポートいただいたお金は全額メンタルヘルスや心理学の普及や情報発信のための予算として使用させていただきます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

筆者 あおきしゅんたろうは福島県立医科大学で大学教員をしています。大学では医療コミュニケーションについての医学教育を担当しており、臨床心理士・公認心理師として認知行動療法を専門に活動しています。この記事は、所属機関を代表する意見ではなく、あくまで僕自身の考えや研究エビデンスを基に書いています。

そのほかのあおきの発する情報はこちらから、興味がある方はぜひご覧くださいませ。

Twitter @airibugfri note以外のあおき発信情報について更新してます。
Instagram @aokishuntaro あおきのメンタルヘルスの保ち方を紹介します(福島暮らしをたまーに紹介してます)。
YouTube あおきのぼやきと見た景色を載せてます https://www.youtube.com/channel/UCIjPXbecsTqIfznCwhKGBgQ

ばっちこい心理学 心理学おたくの岩野、とあおきがみなさんにわかりやすく心理学とメンタルヘルスについてのお話をお伝えします。

YouTube

TikTok
https://www.tiktok.com/@bacchikoishinrigaku

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?