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開催レポート【南方熊楠×ファシリテーション】めたくそ面白かったです/アーカイブ動画完成

↑こちら、無事開催できました。いやー、楽しかった。なによりこのマニアックなテーマにたくさんの方がお申し込みくださったこと、大変ありがたく思います。スライドにして100枚近くのボリュームのお話しを用意してくださったまーぼーこと古瀬正也さん、ありがとうございました。以下、簡単に開催レポートと、アーカイブ動画の完成をお知らせします。

お話し頂いたのは大きく3点。

1,ファシリテーションについて
2,南方熊楠の世界観
3,ファシリテーション×南方熊楠

でした。実は1つめのファシリテーションのお話しがまず、大変面白かったです。のっけからエンジン全開。

自分がやっている仕事をどう定義づけるか

ファシリテーションの実践家でもあるまーぼーが、ファシリテーションをどのようにとらえ、定義づけるのか。興味津々で聞きました。普遍的でオーソドックスな定義を置きながらも、自身の考案した「ファシリテーション・スパイラル」について話していただいたのは、大変よかった。目の前で起きている出来事を観察し、どう捉ええ、自分なりの意図をもって、いかに働きかけるか、という一連のプロセスがとてもよく整理されていました。同時に「僕ならどう書くだろう」と考えさせられる時間でもありました。

自分自身がやっている仕事をきちんと自己定義して話せる人って、すばらしいな。僕は20年近くファシリテーションをやってますが、最近ますます「自分が何をやっているのか」を説明できなくなってきています(汗)。これぐらい明言してくれたら、よく伝わるんじゃないだろうか。あぁ、言語化できる人ってステキ。

加えて、ファシリテーター自身が世界や事象をどのように捉えているか(世界観)の話はとても大事という話は印象的。その人の死生観や宗教観、科学や哲学に関する認識が、場づくりに大きな影響を与えていることをあらためてキャッチすることができました。このあたり、僕は深く頷けます。もう、最近はほとんどこれなんじゃないかと思って来ている。で、今回の企画にもたどり着いているわけです。

今こそ、熊楠の世界観

たっぷり時間を使ってもらって話して頂いたのが南方熊楠(みなかたくまぐす)という人の背景や世界観について。なんとなくは知っていたし、事前学習でも推薦していたマンガ本で熊楠の生涯を読み直してはいたのです。

が、今回、まーぼーに話してもらった中でも、抜群によかったのは「南方マンダラ」についての解説。これは秀逸で、そうか、そうか、そういう意味でイロハニホヘトが打たれているのか、と何度も膝を打つことになります。というか、南方マンダラについては、解説本がいくつもあるのだけど、どれを読んでも分からない。難解すぎて、頭がぷっしゅー!ってなるわけです。まーぼーがスゴいのは、それを、われわれに順を追って分かりやすく話してくれたこと。

↑この本とかに詳しく述べられている南方マンダラを↓こういう風に詳しく読み解いてくれた。

熊楠の残した言葉をたよりに進められるレクチャー。難解な部分もあったが分かりやすい話がほとんど

熊楠の独特で緻密な言葉使いをひとつひとつ丁寧に読み解いてくださったのが、とてもよかった。そしてマンダラにえがれた漢字ひとつひとつの意味合いや、位置づけ、イロハの点の意味など、を分かりやすく語ってくれたのもの、すばらしかった。そうか、熊楠はそうやって世界を見ていたのね、捉えようとしてたのね、というのがビシバシ伝わってきました。

とくに印象深く残ったのはこの南方マンダラは、学会とかに発表したものではなく、ロンドン時代に仲良くなった真言宗のえらいお坊さん(土宜法龍)に書いた個人的な手紙ということ。よくプレゼンテーションとかで「誰か一人にきちんと伝わるように話しましょう。すると万人に伝わります」という感じのことが言われるが、誰かに当てた手紙が、こうやって皆に読み解かれるというのが面白い。とくに手紙の相手が、仏教的マンダラを大切にする真言宗のお坊さんで、大日如来のマンダラに万物の事象や認識・世界観をかけあわせて、熊楠なりのマンダラを書いてみた、というのがとても面白かった。


熊楠×ファシリテーション


で、まーぼーのすごいところは、熊楠の世界観の読み解きの深さと、それを自身の仕事であるファシリテーションと掛け合わせてかみ砕く力でもあります。2才になる自身の娘さんとのやりとりを例に、それを熊楠の世界観で場をとらえるとどのようになるのかの話しがしごく面白かった。そうか、熊楠はそうやって世界をとらえていたのか!が日常に落ちる瞬間。

加えて、話題はどんどんと広がり、途中、哲学者のライプニッツや内山節さんのエピソードなどを交えながら聞いた話も、なかなか印象的。とくに「キツネに騙されなくなった日本人」の話は、以前、みんなの森のサロンで内山節さんお話しを伺ってたこともあって、ものすごく頷ける内容でした。


えひめの板書屋・いわし〜も大活躍

今回の120分で伺う内容がかなり濃いものになるだろうと、思ってファシリテーター仲間である愛媛の板書屋・いわし〜に板書をお願いしたところ、相当なボリュームを一気に書いてくれました。そのメモがこちら。

120分の話を一枚の絵にまとめるというのは、なかなか大変なこと。いわし〜ありがと!

これだけ見てもヒントがあふれると思いますが、アーカイブ見ながらじっくり読み込むとかなり面白いと思います。ちなみにいわし〜とは11月にファシグラ・キャンプというのをやります。「かくことで場を支援する」ファシリテーション・グラフィックについてあえて野外でキャンプ形式で開催するこの企画。毎回とても人気なのですが、今回はとくに面白くなる予感。秋空に かいて 深めるファシリテーション。

120分の話を一枚の絵にまとめるというのは、なかなか大変なこと。いわし〜ありがと!そして、なんか後日こんな絵も書いてくれた。いわし〜は事前訓練で、南方マンダラの写経(模写)までしていたぐらいだから、手が動くんだな。こういうのも、なかなかいい。触発されて手が動く人も、ステキ。

熊楠が「小生のマンダラ」と書いたものに触発されて出てきたいわし〜のマンダラ


アーカイブ動画が完成しました/視聴できます

今回の「南方熊楠×ファシリテーション」のお話、アーカイブ動画にまとめてあります。このアーカイブを視聴するだけでも、かなりずっしりしたものが伝わってくる価値のあるものだと思います。参加費と同様の3000円で120分のアーカイブ動画が購入可能です。ご興味ある方は、以下のフォームにご記入の上、Amazonギフト券をお送りくださればと思います。入金が確認できた方にリンクを送ります。

※参加費を払って当日ご参加いただいた方にはフォローアップで無料でアーカイブ動画を差し上げることができます。当日の感想を添えて「参加した〇〇ですアーカイブ下さい!」と青木マーキーまで、ご連絡下さると嬉しいです。

アーカイブでいつでも学べる時代になったなぁ

探究は終わらない


ひとたび口を開くと、ぐ、ぐ、ぐぐーーと深く話すまーぼー。本人も話してたけど、ぐいぐい話すのも楽しいね。自分が必死こいて調べたこと・学んだことは、人に話してみたくなる。なんか、ちょっと似てる感じで思いだしたのが軽井沢風越学園がやっている「アウトプットディ」。よく小学校とかで「学習発表会」とかをやっていて学年ごとに寸劇や歌を見させてもらうのだけど、個々人がガチで探究したことをのびのび発表できるって、すごい学びの場だなぁ。なんというか個のエネルギーが爆発する感じ。それに触発されて、見た人の何かが刺激される感じ。

熊楠の探究にとどまらず、まーぼーの関心は密教やイスラム教への理解にまで広がっているようです。すげえ。次々と学んでは消化し、自分ごとに捉え直せる力があるまーぼーは、素晴らしい探究家だなぁと思いました。ちゃんと探究している大人に会うのは、楽しいな。また折りをみて、まーぼーの探究のアウトプットを聞きたいと思います。

詩で締めくくる

探究して情報が多くなると、つい全体が掴めなくなったり、単に話が長くなったりもするのですが、まーぼーが最後に読み上げてくれた「詩」が、膨大な学びをシンプルに表していて、とても良かった。詩人じゃないか!かっこいい。詩というのは言葉の凝縮、学びの結晶にもなるんだね。

まとめに一編のポエムをご披露くださったまーぼー。なかなかの詩人でもある

参考図書
以下、まーぼーからいただいた今回の参考文献・参考動画のリストです。
より深く学びを深めたい方は、どうぞ。

【参考図書】
・『南方マンダラ』 南方熊楠, 中沢新一 (編), 2015, 河出文庫
・『南方熊楠・萃点の思想〈新版〉【未来のパラダイム転換に向けて】』鶴見和子, 松居竜五(編集協力), 2021(初版2001), 藤原書店
・『南方熊楠 地球志向の比較学』鶴見和子, 1981, 講談社学術文庫
・『南方熊楠――複眼の学問構想』松居竜五, 2016, 慶應義塾大学出版会
・『未完の天才 南方熊楠』志村真幸, 2023, 講談社現代新書
・『クマグスの森―南方熊楠の見た宇宙』松居竜五・ワタリウム美術館 (編), 2007, 新潮社
・『猫楠 南方熊楠の生涯』水木しげる,1996, 角川文庫
・『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』内山節, 2007, 講談社現代新書
・『モナドロジー 他二篇』ライプニッツ(著), 谷川多佳子・岡部英男(翻訳), 2019, 岩波文庫

【参考動画】
・南方熊楠顕彰館館長講演会「南方熊楠顕彰館はなぜ田辺にあるのか」(2023年3月5日)
https://youtu.be/UJLa7Vl4b6A?si=E-eNZWs-xkfKI9JB
・南方熊楠
https://youtu.be/EW1QgvHG6Dw?si=WggiOdixCn9xDl9m
・NHKセミナー|20世紀の群像|南方熊楠〜森羅万象へのまなざし〜
https://youtu.be/CNqsegsu25k?si=gCuE13JU1XTOX_1n

【参考記事】
・図解 密教の宇宙観を表す「両界曼荼羅図」【コラム】
https://artne.jp/column/615

予告:熊楠ゆかりの地を巡る熊野旅


僕は僕なりに学びをさらに深めようと思い、久しぶりに南方熊楠ツアーでも組んでみようと思っています。大の熊楠ファンで、熊野エヴァンジェリストの大竹哲夫さんとコラボして、2泊3日ぐらいで熊楠ゆかりの地をめぐるイメージです。熊楠記念館はもちろん、熊楠の住んでいた家やお墓、彼が守った森や巨木、文献に出てきた熊野の森を歩いてもいいな。車1台で乗れる人数の小さな旅です。何人か同席できると思うので、興味のある人は声をかけてください。あ、もちろん、まーぼーといわし〜も誘っています。開催日は2024年4月23〜24日(火水木)の2泊3日の予定。行きたい!と思った方はこちらまでご連絡を。

熊楠が実際に生活していたおうちにもおじゃまする予定。熊楠づくしの3日間を堪能する

それぞれの道で、探究し、またどこかで一緒に語らいましょう!それではまた。


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