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変わる就活とAO・推薦の関係:後編【”必然による出会い”が選抜になる時代】

前編【米国の巨大教育カンファレンスNACACに学ぶ】
中編【高大接続から“高大社”接続へ】

高校と大学の接続点が大学受験であり、その選抜を、点数ではなく、より人物の多面的な側面に光を当てるものに変えようという教育改革の取り組みは、今なお頓挫していると言わざるを得ません。

その原因として、米国NACACのような、大学のアドミッションオフィサー高校の教育カウンセラーなどの、異なる立場の教育関係者らが任意にネットワークし、互いの方針や知見を共有しながら人財選抜や育成のベクトルを合意していく土壌が、日本にはまだ育っていないことが挙げられるのではないでしょうか。

さらに、高校と大学だけでなく、企業をはじめとする実社会も、そうしたネットワークに参画すれば、人財採用から働き方まで、これからの時代を創るために何が必要なのか、改めて互いに見直しながら知見を交換し、シナジーを発揮することができるのではないでしょうか。

今回テーマの前・中編ではそんな仮説をお伝えしましたが、大学と企業の採用・選考については、さらにもう一点、思うことがあります。

それは、今後はいわゆる「スカウト型」の選抜が増えてくるのではないか?ということです。

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すでに、就職活動の場面では、いわゆるダイレクトリクルーティングと呼ばれる、データベースに登録している人の中から自社が求める人財に直接連絡を取って採用を行うケースが増加しているそうです。

コロナ禍の影響により、合同会社説明会などの実施が難しくなったことで、これまで大量に設けられていた「偶然の出会い」による学生との接触に頼れなくなったことが原因です。
このような、企業の採用担当者自らが、積極的に欲しい人財にアプローチしてスカウトする動きは、コロナ禍による一時的なものではなく、今後の採用の一つの形式になるかもしれません。

 また、一方で、最近では、大学に進学せずに起業する若者のケースを耳にします。
大学在学中に起業する学生を支援する大学も増えているようです。
先日ある記事では、有名大学のAO入試の一次審査を突破したものの、二次の面接試験を放棄し、大学には行かずに起業した受験生の事例がとりあげられていました。

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若い人たちの価値観は、もはや、
良い高校に入り、良い大学に入り、良い企業に入れば安泰・・・
といった単線上にはないのだと感じます。
“幸せな社会生活を送るためには大学に行った方が有利”という価値観が薄れていく以上、大学側もうかうかとしてはいられません。

さらに、日本の大学は増えすぎました。
1990年代には500そこそこだった大学数は、今では780以上にまで増殖しています。その間18歳人口は減り続けているにもかかわらず、です。

国立大学の再編統合や私立大学の公立化など、膨らみすぎた大学をどう延命するか、様々な取り組みが行われていますが、どれも抜本的な解決にはならないでしょう。

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必ずしも、大学進学が社会で活躍するための絶対条件ではないと考え始めた若い人財に対し、各大学が何をどう発信するか、その中身の方が課題なのです。

もちろん、そのような人財獲得競争の主戦場には、企業の存在も欠かせません。

このような状況を複合的に見ていくと、これからは、 大学も、企業も、学生も、「どちらかが選ぶ側で、どちらかが選ばれる側」といった固定的な関係ではなくなる気がします。

つまり、流れに身を任せた偶発的な出会い以上に、大学、企業、受験生それぞれの「自らのビジョンによる意志」が引き寄せる「必然的な出会い」が、選抜の形式により影響を与える時代になるのではないでしょうか。

少し飛躍しているかもしれませんが、そんな視点も、進路選択やキャリアイメージについて、親と子で話し合う際の参考材料にしていただければ幸いです。

次は「大学改革とESG投資から見える次世代人財育成」です。
お楽しみに。

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