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大学改革とESG投資から見える次世代人財育成 :中編【SDGsネイティブ×企業×大学=新しい未来】

前編【ミッションドリブンのデジタルネイティブ世代】

ESG投資が主流になる社会の中で、せっかくSDGsに貢献する事業に取り組んでいても、その価値や収益性の関係などを強く発信し、企業のプレゼンスを高めることのできる人財の不在が、日本企業の問題です。

私は、そうした課題に対して、色々な意味で鍵を握る人財が、前編にてお伝えしたデジタルネイティブ世代(1990年代から2010年頃にかけ生まれた世代)ではないかと思います。

生まれた時からパソコンやインターネットに触れている、この世代の価値観は、親御さんのような大人世代とは全く異なりますが、その違いを端的に表すならば、デジタルネイティブは「SDGsネイティブ」でもあるということです。

物質的な豊かさが当たり前の中で生まれたデジタルネイティブ世代のモチベーションのドライバーは、経済的な目先の利益よりも、社会課題の解決の方にあると言われているからです。

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そして、この「SDGsネイティブ」と、企業との間にある価値観ギャップは、想像以上です。
ある調査によると、SDGsネイティブの83%が、「事業の成功は財務上のパフォーマンス以外でも測定されるべき」と考えています。
また、「企業が達成すべきこと」に関する質問では、重要性の高い項目として「地域社会の改善」や「環境の改善と保護」が上位に挙がっています。

一方、多くの企業は、「収益の創出」や「効率性の追求」などを企業活動における高い優先事項と考えているのです。

ちなみに、高い給与を提示できるシリコンバレーのユニコーンベンチャー企業であっても、「社会的責任を推進していない」という理由で優秀な人財が確保できず苦労しているという話もあるそうです。

そもそも、役職や部署を超えた決断やアクションを行いにくい環境が企業です。
企業がせっかく若く優秀な人財を採用しても、組織内の構造的な問題に、こうした価値観ギャップが加われば、SDGsネイティブが重視する「働く目的」が見えなくなり、確実に仕事へのモチベーションは下がってしまうでしょう。

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とにもかくにも、企業がどのような社会貢献をしているかを、実態と根拠に基づいた「強いメッセージ」によって発信しない限りは、ESG投資も引き寄せられないばかりか、SDGsネイティブに続く若い世代の優秀な人財も確保できない、ということになります。

とはいえ、日本企業はSDGsと親和性の高い企業が多く存在します。
そもそも企業が有しているSDGsやESGなどに関連するであろう知的・人的資産が事業の収益性や将来性にどう貢献するか、決算書には表すことのできない付加価値を説明できる人財がいれば、それだけでも大きな意味があると言えるでしょう。

そのような視点に立ったときに、注目すべき新たな人財育成プログラムを実施しているのが、コロンビア大学です。
コロンビア大学地球研究所とコロンビア大学院が共同して開講している「サスティナブルファイナンス」という専門コースがあるのです。
企業のサスティナビリティとファイナンスを理解し、それらを掛け合わせることのできる人財を育成するためのコースですが、来年からは、同じコースをオンラインでも開講し、キャンパスがあるニューヨーク以外の学生も受講できるようにするとのこと。

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ちなみに、コロンビア大学地球研究所は、SDGsの策定に深い関わりのあるジェフリー・サックス博士が所長を務めている機関です。
私が理事を務める日本アクティブラーニング協会が開発・提供している人財開発プログラムも、実は、ジェフリー博士から「SDGs人財を育成するカリキュラム」として、日本で初めて認定を受けています。よろしければ、ぜひ参考にしてみてください。(参考:SDGsプログラム

さらに、先日、慶應義塾大学と米国シティバンクとが、ESG分野における連携協定を締結したことが発表されました。
シティグループが世界160カ国で培ったサスティナビリティ分野における知見とノウハウを、SDGsやESGの研究に積極的な慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスに提供し、この分野における共同研究や人財育成を推進するそうです。

こうした大学学内の教育環境の進化は、SDGsネイティブとの意識の差にみられるような世代間ギャップの緩和のみならず、大学が実社会との「知の交流地点」となり、イノベーションや新たな価値創造を生み出す機関として、新しい機能を担うようになるのでは、、、と感じさせます。

(後編につづく)

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