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大学改革とESG投資から見える次世代人財育成 :後編【大学の真価とは?】

前編【ミッションドリブンのデジタルネイティブ世代】
中編【SDGsネイティブ×企業×大学=新しい未来】

日本企業にとって、その取り組みが、長期的に見た時に社会の課題解決に向かうものであることを強いメッセージとして発信できるかどうかは、投資家からの評価の面からも人財採用の面からも、非常に重要な課題です。

そして、決算書にすぐに反映されるような短期的な目先の利益ではなく、持続的で長期的な発展を重要視されるという世界的な流れは、今後ますます加速していくでしょう。

なぜならば、経済合理性よりも社会課題への貢献を重要視するいわゆる「SDGsネイティブ」としての若い世代が、今後、消費者としても、従業員としても、投資家としても、あらゆる立場から社会の流れを生み出す中心的な存在になっていくことが明らかだからです。
どんな企業も組織も、彼らの価値観を無視することはできないはずです。

もっと言うと、SDGsやESGの国際的な広がりは、「世界のルールが変わった」ことを意味しているのではないでしょうか。

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一方、SDGsは、国連という国際機関で合意したものではあるものの、各政府に対して法的な拘束力がない点については以前の記事でもお伝えしました。この推進についての責任や財源についても、特に取り決めはありません。

つまり、あくまでも「各自の自主的な取り組み」という位置付けなのです。

皆さんは、この事実から何を感じますか?

私は、SDGsやESGに対する「企業間格差」がどんどん広がっていくのではないか?と思います。
規制に頼らずに、自主的な判断と行動に委ねられるということは、主体的にこれを推進する企業がある一方で、目先の決算書だけに固執するような古い体質の企業はなかなか実行しようとせず、結果、その白黒が明確になるのでは・・・?

ちょっと怖いですよね。

だからこそ、そのような極端な格差を生み出すことにブレーキをかけ、新しい時代に必要なイノベーションや多様な人財の交流生み出す素地として、大学という環境は今後ますます重要になるのではと思います。

経済産業省が2019年に公開しているSDGs経営/ESG投資研究会による報告書では、以下のように記されています。

“SDGs 達成のために不可欠なイノベーションを興し、ビジネスの力で社会課題を解決していくには、「知」の集積が不可欠である。この観点から、まさに「知」を通じて、よりよい未来社会への貢献を目指す大学を始めとする教育・研究機関は大きな役割を果たし得る。”

このような前提を踏まえると、大学進学という選択が、単に「社会に出る前の準備機関」ということに止まらないより大きな意味を持ってくるのではないでしょうか?

そして、SDGsに貢献し未来の社会を創造するための環境が、大学の真の価値だとすると、それは一体どのようなものなのでしょう?

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わたしは、大学環境に蓄積されている有形無形の資源を、いかに有意義な形で活かせるかにかかっているのではないかと思います。
つまり、大学そのものが、価値創造やイノベーションを誘発できる環境であるかどうかです。
そのためには、大学というインクルーシブな場に集う「人財のダイバーシティ」が非常に重要になります。

とても皮肉なことに、これまでは、そうした多様性を失わせてしまうきっかけが、大学受験でした。
偏差値という一つの価値基準で大量の学生を採用していたからです。同質性の高い人材環境からは、なかなか新しいものは生み出せません。

実は、そうした現状を打破するような、とても挑戦的な選抜システムを構築している大学があります。

秋田の公立大学である国際教養大学です。

ここは、「多様な人材を発掘する入試制度」として、175名という決して多くない定員に対し、なんと設定されている入試の種類は16種類。これらの多くはいわゆるAO・推薦入試です。ちなみに一人の受験生における受験可能回数は、最大6回あります。

かつ、他の国公立大学の併願が可能であり、入学時期も4月、9月のいずれかを選択できるなど、受験生の選択肢を奪いません。

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キャンパスは、東京から飛行機で一時間、秋田空港から車で5分の森の中です。かなり不便な環境に設立された大学にもかかわらず、全国各地から志望者が集まり、出願倍率は10倍を超えるほどの人気ぶり。

今後、いくらAIが進化したとしても、ゼロからイチを生み出すようなイノベーションの創造は、人間にしかできない資質になるはずです。
そうした素養を育むための世界に通用する教養教育が、国際教養大学の大きな魅力ですが、多様な選抜を通して人財のダイバーシティを持続的に維持できる大学環境そのものの付加価値が、そのブランドをさらに押し上げているように思います。

今までの日本の大学は、「指定日にペーパーテストによって行われる一般選抜」といった単一の形式に大きく偏りすぎてきました。

そうしたスキームの限界に加え、世界のルールが変わった今、改めて大学の真価が問われる時代になったのだと思います。

受験生をお子さんにもつ保護者の方におかれましても、もう一度、そのような視点で、「大学選び」、そして「受験方式選び」を行なっていただければと思います。

次は「AO・推薦入試の指導の極意とは?」です。
お楽しみに。

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