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便利を追求し洗練に至る(SPOT デザインのひみつ 中編)

 KINGJIMさんが僕たちTENTと一緒に作ったSPOT(スポット)シリーズ。

その開発エピソード中編です。
前編はこちらから。

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アオキ(写真左)

さて今回は TOOLSTAND(ツールスタンド)についてですが。

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アオキ
ハルファイルの最初の提案が通って、開発を進めてた頃でしたっけ。たしか、いきなりハルタさんがアイデアスケッチを見せてくれたんですよね。


1.チームとしてのアイデア


ケンケン
突然でしたよね。もう見た瞬間から「うわー!これは悔しい。すごく欲しい」って言った覚えがあります。


アオキ
僕もビックリしました。
「ポケットの収納を立て看板みたいにするなんて!」って。

でも今この資料見ると、最初は「立つ」よりも「吊るす」を重要視してたんですね。

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ハルタ
そうですね。たぶんまだ「立つ」ってだけのことに自信が持ててなかったんだと思います。


ヤマネ
そうだったんですか。

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アオキ
これはそもそもどうやって思いついたんですか?


ハルタ
前編でお話したハルファイルの開発はすでに進んでいたんですけど、山根さんから「ブランドとして立ち上げるには、もうちょっと製品ラインナップが欲しい」と言われていて。


ヤマネ
そうでしたね。ファイルに留まらない、家庭向けのブランドとして打ち出したかったので。あといくつか商品が欲しかった。


ハルタ
何年も前から「工具入れ」みたいなものを作りたい気持ちがあったので、また考えてみたいと思って。

街を歩いていた時に、カフェの立て看板が目にとまって。この立て看板に、棚なんかをつけたら工具入れとして使えるかな?と。

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ハルタ
そこから、立て看板の構造を使った「収納」ということで検討していったんです。スチール製の棚っぽいものとか、有効ボードを活用したものとか。

あまりゴツいものではKINGJIMさんっぽくないから、もうちょっと軽やかな構成はないかなとか。

そんなことを考えていた時に、ケンケン君が事務所で使っていた椅子が目に止まって。

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アオキ
おお、これはケンケンくんが休日に、DIYで作ったやつですね。木の板でできたスツールにミシンで縫った布ポケットを被せた、TENT事務所に隠れていた名作。


ハルタ
「なるほど、布でポケットを作るという方法もあるのか」と。あれがヒントになって、TOOL STANDのアイデアが生まれた気がします。

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ケンケン

このポケット付きスツールは、毎日使ってて一年くらい経過してたんですけど、もう一歩突き抜けたい感じがあったので止めていたんですよね。

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ケンケン
そうしたら今回、治田さんがより必然性のある「三角形」にして、木ではなく細いアイアンフレームで描いた。

その結果、もっと軽やかになって、折り畳めるようにもなってて。これは心底「やられた!さすがだ。。」って思いましたよ。


アオキ
いやーもうこれは、ケンケンさんナイスアシストというか。MVPですよ。


ヤマネ
そんな感じやったんですね。完全にチームワークから生まれてる。

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ヤマネ

その時もたくさんの提案をいただいたんですけど、これに関しては「すぐやりましょう」ってなりましたね。


ハルタ
そうですね。次の段階で社内の企画会議を通すというお話だったので、こんな感じのカタログイメージを作りました。


修正02

当時の提案資料のごく一部

ヤマネ
僕の方でもA3サイズで出力して社内プレゼンしたんですけど、このカタログイメージはすごく助かりました。

普通はパワーポイントとかのプレゼン資料が多いと思うんですけど、それだとメーカー目線になりすぎてしまう。

こんなふうにカタログイメージで提案いただけると、お客さん目線になれてすごく判断しやすかったと思います。


ハルタ
下手に説得するよりもカタログにしてしまった方がきちんと伝わる気がして。

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ハルタ
普段ならここから僕たちが詳細な図面や指示書を作っていくんですけど、山根さんはカタログ末尾にあるこの大雑把な図面を受け取って、すぐ試作に入っていきましたよね。


ヤマネ
はい、図面や指示書は僕の方でも作ることができますし、何よりここまでしっかり世界観や構造が構築できていたんで、作ってしまった方が早いと思って。

それで最初の試作はすぐにできたんですけど、実はそこからが苦難の始まりでした。

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2.妥協ではなく洗練

ヤマネ
ツールスタンドが商品として使いやすくて魅力的であることは、一個目の試作で十分に確認できました。

ただ、社内的に目指したい価格感に対して、どうしても高くなってしまって。

とはいえ「これをやめれば一気に価格が下がる」という要素も見つからないので、部品や製造工程を1つ1つ見直して行きました。

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ヤマネ
たとえば縫製の工程をできる限り減らすために、ポケットのサイズと数はどれくらいが良いのかを、何個も試作して検討しましたし。

鉄製の足についても、当初ネジを使っていたものを、曲げだけでできるようにしたり、それに伴って、鉄と生地との縫製工程を見直したり

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ハルタ
裏面の布も、この試作からさらに変更されてますよね


ヤマネ
はい、生地の面積もできる限り減らしたり。まじでめちゃくちゃ小さいコスト削減を積み上げていきました。


ハルタ
僕たちは通常そういった量産フォローに関しても深く関わることが多いんですけど、それらと比べてこのTOOLSTANDはかなりスムーズに進んでる印象を持ってしまってました。

実は裏でヤマネさんがかなり奔走してたんですね。

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ヤマネ
実は「どんだけ試作図面を描いたらええねん!」ってくらい、何度もやりとりしてましたね。


アオキ
でもすごいのは、試作を見させていただくたびにむしろリファインされていった印象があるんです。


ヤマネ
そうですね、コスト削減がきっかけではあるものの、妥協じゃなくて洗練になるように努力してました。

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ハルタ
普通はコスト削減っていうと、どんどん当初の意図と違う修正が入りがちだと思うんですけど

TOOL STANDは「次はこう修正する予定です」っていう山根さんの意見が毎回すごく的確で。かなり安心してました。


ヤマネ
それは実は、最初にカタログイメージで提示いただけてたことがデカかった気がします。

修正01


ヤマネ
「こういう場所でこういう風に使われる、こういう感じで伝える製品」っていうゴールがかなり共有されてたので、ブレずに修正していけましたね。



3.暮らしの中で検証する

アオキ
さまざまな大きさのポケットがあるTOOL STANDですが、サイズってどうやって決まっていたんですか?

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ヤマネ
正直、ポケットの「数」については、コストから導き出しています。ただ、大きさは自由だったので、どーしたもんかなと思いまして。

まずは僕の家にあるものをかき集めてきて。全部どこかしらに気持ちよく入れられる状態を探りました。

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ヤマネ
雑誌やノートパソコンやペンなどはわかりやすかったんですけど、一番悩ましかったのはリモコン類です。

でも「リモコン専用ポケット」なんてものを作ってしまったら、かえって用途を狭めてしまう。いい感じのサイズを探るために各メーカーのリモコンサイズを調べまくりましたね。

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ハルタ
三角形の角度についても細かく検証してましたよね。


ヤマネ
そうですね、この三角形の部分にボックスティッシュやコロコロ、ヘッドホンなんかを入れたかったので、大きくなりすぎないけど取り出しやすいギリギリを狙って調整しました。

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4.便利さだけでも突き抜ける

アオキ
在宅ワークになってからダイニングテーブルでも仕事するじゃないですか。

そんな時、ノートPCとか書類とかをサッとしまえて持ち運べるので、このTOOL STANDが家にあって本当に助かってます。

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ヤマネ
これ今になってすごいと思うのが、開発スタート時点では「在宅ワーク」や「リモートワーク」なんて言葉すら存在してなかったんですよね。


ハルタ
我々は常に未来を見据えてモノづくりをしておりますからな。


アオキ
全てが我らのシナリオ通りですからな。

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アオキ

ところで、我が家では在宅ワークの他に、子どもが宿題を片付けるのに使ったりしてて。

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アオキ
実家では70代の親が、デジカメや腕時計、老眼鏡やハサミとかを入れてます。

「これを使ってからモノをなくすことが無くなったぞ」って言ってますよ。

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アオキ
世代とか関係なく役立ってるって良いなあと思います。



ヤマネ
TOOL STAND のすごいところって「便利さ」だけでも突き抜けてることだと思うんです。

便利だから使い始めたら、結果的にオシャレにまとまるという。


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ハルタ
コスト削減努力の甲斐もあって、価格もお手頃ですしね。


ケンケン
鉄とナイロンだから、丈夫ですしね。


ヤマネ
たしかに。


アオキ
いろんな世代や職業、さまざまなシチュエーションで使いやすい。いわゆる「デザイン好き」な方に限らず、幅広い方に長く愛用してもらえる道具になりそうですね。


ヤマネ
まだまだいろんな使い方ができる気がするんで、これからもユーザーのみなさんと一緒に楽しい使い方を開拓していけると嬉しいです。


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次回はSTACK BASCKETのお話と

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SPOTブランド全体のお話の予定です。

乞うご期待!

本日は、ありがとうございました。


全員
ありがとうございました。

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