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良さを見極め削ぎ落とす(SPOT デザインのひみつ 前編)


KINGJIMさんが僕たちTENTと一緒に作ったSPOT(スポット)シリーズ。

2021年はじめに発表されて以来、おかげさまで大好評です。

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今回は、このシリーズがどんな経緯で誕生したかをお話していきます。


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TENTアオキ(写真左)
さて今回は、KINGJIMさんから大好評発売中のSPOTシリーズについてお話していきたいと思います。


TENTヤマネ(写真左から二番目)
よろしくお願いします。


TENTハルタ(写真右)
初登場ですね。ヤマネさん。


TENTケンケン(写真右から二番目)
TENTのTEMPO 』に来られた方は、すでに会ったことある方も多いかもしれないですね。


ヤマネ
はい、はじめまして。現在『TENTのTEMPO』に主に生息しております山根(ヤマネ)と申します。

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山根 涼(ヤマネ リョウ)
キングジムのデザイン設計部や商品開発部に所属し、商品企画〜生産までの開発業務を一貫して行う。
その後SUZURI(GMOペパボ)のアイテムディレクターを経て、2021年8月よりTENTに加入



ヤマネ
僕がなんで今回の記事に登場してるかというと、実はSPOTシリーズ立ち上げ当時はKINGJIMに在籍してまして。


ハルタ
当時TENTヘ最初にメールをくれたのがヤマネさんでしたよね。


アオキ
でしたねー。まずはそのあたりからお話していきましょう。

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1.めっちゃ高そう

アオキ
そもそも山根さんは当時、なんでTENTのことを知ってたんですか?


ヤマネ
2015年くらいかな。MAMORIOを見かけたのが最初だったと思います。その時はTENTさんがデザインしたってのは知らなくて。

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その後でNuAns NEOが発表されて、たしかグッドデザインのBEST100とか獲られてたじゃないですか。

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そこで初めてデザイナーとしてのTENTさんの名前を知って「MAMORIOもやってたんか、他にもあれも、それも!」ってなって。

今だから言いますけど、当時の僕から見たTENTさんってもう「有名なクリエイター」みたいなイメージだったんで。

「いつか一緒に仕事したいな」と思いつつ「デザイン費めっちゃ高そう!」って思って、なかなか連絡するに至らなかったんですよ。


ハルタ
いやいや、なんですかそのイメージ。

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ケンケン
巨匠的な…


アオキ
そんなことなかったでしょ


ヤマネ
はい、実際にはそんなことなかったんですけど。でも当時はそんなイメージだったんで、小さな商品企画ではなくブランド立ち上げみたいなことを一緒にやれるタイミングを伺ってて。

いよいよ2018年に、初めてメールさせてもらったんですよね。


アオキ
そしてまずは会ってお話を聞いたわけですけど、すごい練り込まれたインプット資料を見せてもらった覚えがあります。


ヤマネ
「"あのTENTさん"にオリエンするんやから」って、ゴリゴリに資料作り込んでいきましたね。

KINGJIMってファイルやテプラを中心とした事務用品の会社なんですけど、これからはそういった便利さを家庭にも活かしていけないかなと。

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ヤマネ
そういった方向性をお伝えした上で、基本的には「テーマに基づいて自由に企画提案して欲しい」という主旨になっていたと思います。


ハルタ
とは言いつつ、いくつか具体的なお話もしてた気がします。


ヤマネ
そうですね、当時すでにヒット商品として存在していた「冷蔵庫ピタっとファイル」というものがあるんですけど。

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アオキ
冷蔵庫に貼り付けて、学校のプリント類などを中に隠しておける便利なファイルですよね。

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ヤマネ
はい、例えばそういった感じの「家で使える便利なもの」をベースにした上で「TENTさんらしい、暮らしに馴染むデザイン」になるようにお願いした記憶があります。

とくにこの『冷蔵庫ピタっとファイル』はとても人気だったんですけど、「自分の家で使うにはもうちょっとシンプルにしたいなあ」という気持ちもあったので。


2.機能を足すのではなく



アオキ
そんな『冷蔵庫ピタっとファイル』をベースにした提案や、他にもいわゆる『キングファイル』の考え方をベースにした新しい商品群など、TENTからいくつかの提案をさせていただいたわけですけど




ヤマネ
そうでしたね。さまざまな提案を、紙製の試作とカタログイメージ、そしてGIFアニメまでつけて納品いただいたので「こんなやり方あるんか!」ってビックリしました。

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当時提案したカタログイメージのごく一部


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当時提案したGIFアニメのごく一部


アオキ
たしか「いわゆるプレゼンテーション資料では良さが伝わらないね」なんて話し合って、そういう形になった気がします。


ヤマネ
いろいろ他にもご提案はいただいていたんですけど、まずはこの『壁に貼り付けるファイル群』は進めていこうという話になりました。


アオキ
この辺りは、かなり早い段階で治田さんが試作まで作っていた商品群だったんですけど、そもそもどんな風に考えていったんですか?

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ハルタ
うーん、もともとお話いただいていた『冷蔵庫ピタッとファイル』の「壁に貼り付けるファイル」っていう考え方が面白いなと思っていたんで、そこに敬意を表しつつ。

できる限りシンプルでソリッドな仕上げにしたいなあと。

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その上で、他に貼り付けたい場所がないかな、貼り付けたい構造がないかな、と考えました。

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たとえば、もしリビングの壁に貼り付けられるとしたら、突然ファイルが貼ってあるのも違和感がありますよね。

なので、お気に入りのポスターやカレンダーを掲示できたほうが嬉しいかもしれないなあとか。

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あとは、スリムなサイズにすれば狭い場所でも使えるようになるんじゃないかとか。

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いわゆるドキュメントホルダーというんでしょうか。蛇腹状に開くファイルあるじゃないですか。

あれを応用すれば、電気料金の紙とかハガキとか、領収書やチケットとかが入れられそうだなとか。

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そういう形になると、玄関ドアにつけておいても便利そうだなとか。

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場所や用途を考えていく中でアイデアが広がっていった感じですね。

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アオキ
そうしてまずはこの4つのファイルの基本的な構造ができていった、と。
ではそこから先については、何か工夫した点とか思い出せますか?


ハルタ
そこから先は、ケンケンさんにお願いしましたね。


ケンケン
はい。ハルタさんから基本的な構造は受け取って。それを自分の家でも使いたくなるくらいシンプルなものにまとめていきました。

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ケンケン
具体的には、もともとの『冷蔵庫ピタっとファイル』を見ながら、その要素を1つ1つ見直していきました。

たとえば内側の透明ホルダー部分。『冷蔵庫ピタっとファイル』はよく考えられていて便利ではあるんですけど、ちょっと癖の強い形状になってしまっていたので

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ケンケン
同じ機能を満たすための、よりミニマルな形状はないかなと。
Rを、切り込みを、穴を、溶着箇所を、一つ一つ見直していきました。


アオキ
なるほど、なるほど。

すでに存在するモノをリファインしていこうって言うと、わりと機能を足すことになりがちだと思うんです。

でもこのファイルの場合は、そうではなかったと。


ハルタ
足すのではなく良さを見極めて削ぎ落とすと言うか。そういう進め方でしたね。

その地道な積み上げで、モノってぐっと良くなることがありますよね。

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アオキ
ちなみに、世の中にいろいろなプロダクトがある中で、PPシートのファイルってかなり設計の制約が多いほうですよね。


ケンケン
そうですね。シートを打ち抜いて、折り曲げて、シートどうしを超音波溶着してくっつける。基本的にはそれしかできません。


ハルタ
しかも超音波溶着って重ねてできないから、これくらい部品の多い製品だと、表裏で場所の奪い合いになって。

パズルみたいになっていきますよね。

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ヤマネ
そういう点で特に苦労したのがペンホルダーですね。

本当につける場所がなくてかなり苦労しましたけど、最終的には裏面に溶着して横から出す形に落ち着いて。

使わない人にとっては畳んで裏に隠しておける構造にもなった。

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ヤマネ
あとは、個人的に「めちゃくちゃすごい発明だ」と思ってるのに、それほどまだ語られてないやつがあるんですけど

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アオキ
おお、どこですか?


ヤマネ
クリップタイプのやつの、クリップ部分ですね。

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ヤマネ
ここ、なにげにすごくて。

こういう紙を挟むクリップって、いちいちクリップを持ち上げるの地味に面倒臭いじゃないですか。

でもこれは、紙を滑り込ませるだけ

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アオキ
うわわ!本当だ!クリップ持ち上げなくて良いんですね。


ハルタ
すごい…なんてこった。今日までこれを知らなかった。


ヤマネ
TENTさんのデザインで、クリップ部分が横長のバーになったじゃないですか。

この横長を生かすことで、この挟み込む構造を実現してるんですけど、詳細はヒミツです。

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アオキ
これはもっとアピールした方が良い発明ですね。

大事なことだからもう一回、動く画像を貼っておきますね。

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アオキ
他にも何か語りたいポイントはありますか?


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3.それに名前をつけるなら



ハルタ
実はこのファイルシリーズで、ブレイクスルーだったなと思うのはネーミングです。


ヤマネ
いっぱい候補出してくださいましたよね。何十種類もあった気がします。


中でも僕が印象に残ってるんは「貼る太くん」ですね。

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ケンケン
ありましたね、はるたくん!

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ハルタ
いやいやいや


アオキ
いやー、もしあれになったら、それはそれで面白かったんですけど、結果的に決まったのが

壁に貼りつけるファイル。
だから『ハルファイル』

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ケンケン
日本語としてそのままの名前なのに、英語表記すると、知的な何かに感じるのが面白いですよね。


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ヤマネ
そーなんですよね。これはやられました。

そして、そのネーミングが、ファイルの背表紙のところに控えめだけど格好良く入っているのが、たまらないですよね。

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4. 控えめで小さな工夫たち


ヤマネ
こういう「スタイリッシュ」とか「インテリアに馴染む」みたいなことを狙う商品って、名称とかは裏の一番目立たないところに追いやりがちやと思うんです。

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実際このハルファイルも、暮らしの中で普通に使う分には、真っ白な四角形が見えるだけ。

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でも側面を覗き込むとロゴが見えてきて。しかもこれがあることでむしろグッと良さが増している感じがします。

さすがやな、と思いました。

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アオキ
そういう小さな工夫で言うなら、内側のマグネット部分に細かい文字表記がありますよね。さりげなく。あれは、どういう意図だったんですか?

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見えづらいですが、マグネットに文字があります。実物でご確認ください。



ケンケン
やっぱり、ハルファイルが他のファイルと違う部分って「貼り付けられる」ところだと思うんです。

最終的には吸盤を使って貼り付ける商品になりましたけど、当初はマグネットで貼り付けることを想定していまして。

マグネットがただの部品ではなく、誇りに思えるようなパーツにしたいなと思って文字を入れました。

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最初期の試作時点から
マグネット部分に微細な文字を入れていた


アオキ
では最後に、この4種類で個人的なおすすめはありますか?


ヤマネ
悩ましいですけど、やっぱりポケットですね。ポイポイ投げ込める感じがすごく使いやすいです。


ケンケン
あと、塊っぽさが一番ありますよね。

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ヤマネ
そうなんです。

PPシートを使ったファイルっていうと、ペラペラと言うか、歪む感じみたいなのがあってどうしても安っぽくなりがちなんですけど、ハルファイルはその辺がしっかり四角くなっていて。

とくになかでもポケットは、上まで囲い込んでるんで、しっかりした塊になってる。

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ハルタ
マグネットをうまく使ったフタのロック機構も気持ち良いですよね、パチンって閉じる感じとか。


アオキ
他にも細かな工夫はまだまだあります。ぜひ実物を触ってみてもらいたいですよね。


ヤマネ
TENTのTEMPOで触れますのでお気軽にお立ち寄りください。


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というわけで今回は『ハルファイルシリーズ』についてお話しましたけど、SPOTにはまだ商品がありまして



TOOLSTAND(ツールスタンド)

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そして
STACK BASCKET(スタックバスケット)

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がありますから。

引き続きこれらの「デザインのひみつ」を深掘りしていきたいと思います。

乞うご期待!

本日は、ありがとうございました。


全員
ありがとうございました。

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続きの中編はこちら

https://note.com/aoki_tent/n/nf238c964c986

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