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京都のドンキでラビリンス

labyrinth・・・迷路、迷宮

イタリア出身のアデーレと出会ったのは京都のゲストハウスだった。

観光地に近いだけあって、その宿にいた日本人は僕だけ。
英語以外にも色んな言語が共有ルームで飛び交っていて、唯一聞こえる日本語は誰かが興味本位でつけたNHKのニュースだった。

ドイツ出身のペトラに「これなんて言ってんの?」と聞かれたが「今日日本で起きたことを言っている」となんとも恥ずかしい答えしかできなかった。

He said what happened in japan today.

これでもだいぶマシになった。
最初はグーグルなしでは会話ができなかったが、4日間も英語圏に放り込まれると多少はできるようになる。

でも、He said what happened in japan today.

日本人というだけで話しかけてもらえたのだ。
それだけ珍しかった。

僕は仲良くなったアデーレと他数人とバーに行くことになった。

英語が話せない僕は五人の海外女子と京都の夜に繰り出した。

「なんでこうなった」そう思いながら彼女と会話をしていた。
みんなゆっくり話してくれたから会話が割と上手くいった。

ふとアデーレは「あれ何」と指差した。
ドンキだった。僕は「ジャパニーズ カルチャー」と答えた。

彼女は他の女性陣に先に行っててくれと言い、僕は二人でドンキに入った。

とても不思議な気分だった。
京都まで来て、ドンキ。初対面の女の子、それも海外女子。

困惑しながら案内をする。
カタコトの英語で、ここはめっちゃ安い、このフロアは家電もある、ここは化粧品がある。

狭いドンキの店内で僕らは必然的に密接する。

くねくねした狭い通路、棚からこぼれ落ちそうな商品の山。

彼女は「labyrinth」と言った。

「何それ」と僕。
「ラビリンス」と彼女。
「え?」と僕。
「ら、び、り、ん、す」と彼女。

あ、迷路か。と僕。

「そうだね、僕もたまに迷子になるよ」と僕。
「私は出口がどこかわからなくなったわ」と彼女。

確かに、初見のドンキは僕でも疲れる。
ジャパニーズ極狭文化、スケールが逆の意味で違う。

僕は京都のドンキでラビリンスに迷い込んだ。

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