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あおいうにアーティストステートメント【20240714版】

あおいうにの絵画の特徴は、ペインタリー(絵画的)で情熱的なタッチと荒々しいテクスチャ、激しい極彩色の色彩、豪快な構図、不定形なフォルムだ。
それらは、抽象表現主義における「熱い抽象」に通じるところがある。
また、即興的にエスキースを取らず描くことでその瞬間をダイレクトに切り取ることを目指している。

あおいの作風が「熱い抽象」となった背景は、「信仰」と「幻触」という2つのキーワードから説明できる。

あおいは旧統一教会の2世として生まれた。そこでは教祖が絶対的な権威として君臨していた。物心ついた頃には信者であることが当然であったあおいは、思春期になり自我が芽生えると信仰心が教祖から徐々に離れ始めた。
そこで新たな信仰の対象が必要になった。
それがあおいにとっては絵画である。よって、絵画を裏切ることはできなくなった。

性や恋愛に対し厳格な統一教会は、信者の貞操を管理する宗教行事がある。
そこに対する抑圧と反動から、あおいはかえってそれらを表現することが多くなった。それは、性や恋愛を描いたとしても地獄へ堕ちることはないという確認行為なのであろう。
あおいにとってそれを描くことは地獄への恐怖を乗り越えるための儀式だ。

2世としてのストレスから精神を蝕まれたあおいは、20代で入退院を繰り返した。メンヘラの特性を持つあおいであるが、メンヘラをテーマにした表現活動を行いつつも、病理をアイデンティティにはしていない。
精神疾患の主たる症状は幻触をはじめとする幻覚である。
皮膚感覚が曖昧なため、触覚を信用できないあおいは、絵の具に触れたり、身体を使ったり、筆ではない有機的な感触のものを使って描く。
これは、現実における感触を認識し確かめたいという欲求から来ており、既成概念や絵を描く行為自体の再検討でもある。

表現主義的でペインタリーな調和した配色、線のリズム、画面を横断する流れるようなタッチが、あおいの内的な発露を手助けしている。
彼女の作品は、日本における「メンヘラ」の文化を新たな表現主義の文脈として位置付け、生々しい絵の具の物質感が、いま目に見えているものが真実とは限らないことを肉迫してくるだろう。





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