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寂しい夜に読んでみて~『銀河鉄道の夜』

孤独だなと感じたことはだれでもある。
人生の後半を迎えた時に感じる孤独は、また若い頃とは違った哀愁がある。子どもが育ち自分の手を離れて、にぎやかだった家はシーンと静まり返っている。
そんな夜に、昔読んだはずの本を手に取ってほしい。

舞台は、大正後期から昭和初期の岩手県。
少年ジョバンニが、七夕の夜、銀河を不思議な列車で旅する物語。
父親は出稼ぎで不在、母親は病気がちの厳しい環境に加えて、学校でも友だちとうまくいかない。
家に帰っても、学校へ行っても、まわりに人はいるのに、常にひとりぼっちという孤独感が付きまとう。
そんな時に、ひょんなことから、なかよしのカンパネルラと共に列車の旅へと出る。
車窓に移る世界はキラキラして美しく、夢の世界のよう。駅に着くたびに乗ってくる変な人たちと出会う。
なぜ旅をしているのだろうと不思議に思いながらも、ジョバンニは、大好きなカンパネルラと一緒にいる事が嬉しくて仕方がないのだ。

舞台が日本であるにもかかわらず、登場人物に、ジョバンニ、カンパネルラ、岩手県を「イーハトーブ」(理想郷)と名付けてしまう、著者宮沢賢治のネーミングセンスも、この物語の面白いところになっている。

「カンパネルラ、僕たちどこまでも一緒に行こうね」 
「僕たち、しっかりやろうね」 
ジョパンニがカンパネルラに、何度も問いかけるところが胸を打つ。
寂しくて寂しくて、誰かそばにいてほしいんだと、そのためならなんだってするんだという強い気持ちが伝わってくる。

若くても年をとっても、いつだって、人は寂しい。
子育てで忙しい時は、早くひとりになりたいと思っていたのに、そうなってみるとやっぱりあのにぎやかさが恋しくなる。
必死で孤独から逃げていた若い頃と、もう逃げられない今。
形は違っても、人には、いつまでも孤独が付きまとうものなのだと思う。

でも本の中には、ジョバンニがいる。寂しい時は、ジョバンニ、一緒に頑張ろうと言いながら、また読んだらいいのかもしれません。

2019年2020年と『銀河鉄道の夜』について書いてから、今回で3度目
少しだけ進化し、ブックレビューとして書いてみました

もっと気軽に、自然にnoteもかけたらいいなと思います

2022年6月

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