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星空

雨の日曜日、立ち寄った本屋の名作コーナー。宮沢賢治『銀河鉄道の夜』を見つける。どんなお話だったのだろう。小学生の頃、先生に言われて読んだのか、授業中に読んだのか、思い出せない。確か、外国人の子どもが、銀河を旅する物語?  それは、銀河鉄道999?   記憶が混ざって、思い出せない。

家に戻り、もやもやしながら、読み始める。舞台は、岩手県、イーハトーブ。登場人物は、ジョバンニ、カンパネラ・・・そうだった。この、何とも言えないロマンをくすぐるネーミングだ。パン!と、目の前が開けた。夜空に輝く天の川が、そこに見えるようだった。

物語が進むにつれて、子どもの頃も思い出していく。生まれ育った家は、市街地から少し上ったところにある、山あいの町。庭からは、南に富士山、北に八ヶ岳が見えた。晴れた日の夕暮れ。庭に出て空を見る。日が沈み、夕焼けが西の空を染めていく。だんだん暗くなり、眼下に広がる街が灯りだすと、頭上に星空が浮かび上がる。キラキラの星。ずっと、空を眺めていた。

ゆっくりと、読み進める。1字1字かみしめるように。思ったことを言わずに、心にとどめてしまう主人公。長く柔らかく続く文章の、心地よさ。絵のように浮かんでくる情景が、子どもの頃のあの星空と、重なり合っていく。

梅雨が明けたら、行ってみよう。天の川は見えないかもしれないけれど。イーハトーブへ。

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