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800字日記/20221209fri/153「セルフデコンストラクション(自己脱構築)」

「(仮)上陸者たち」の序章は三百頁。これを氷山の一角(内容はそのままで三十枚)に圧縮する。どうやって? 

筋は、海上、工作船、巡視船、臨検(職質)、襲撃、裏切り者の射殺(処刑)、上陸と単純。

ただ文字数を減らすこととは違う。シーンを切って貼る映画編集のようにはいかない。文字だからだ。主人公が目覚めた(物語が始まった)視点に戻って「何か」を見直すしかない。では「何か」とは?

既視感(文字を文字で説明する)は避ける。例えば「工作船」を言葉で説明しない。

⑴ この船体はアルミニウム合金でできている。(地の文)☞×
⑵ 「この船体はアルミニウム合金に鋼鉄が張られ、防弾仕様のガラス張りの操だ室の両脇には対戦車型二十ミリ機関砲が一門ずつ隠されている。機関室には千八百馬力のエンジン二基が搭載されて三十八ノット(およそ時速七○キロ)での航行が可能だ」出港の直前に将校は四つの勲章をゆらゆらさせて、いった。☞△、長いほど×
⑶ 目覚める。魚の臭いが鼻をつく。中尉は赤く朽ちた階段をのぼって首をだす。操だ室の座席は撤去され、後ろの壁にはAKが掛けてある。直立不動のまま舵をにぎる特務上士は緑色のチョッキを着、手榴弾を下げていた。左手で中国製の高級タバコを吹かしていた。
⑷ 「肘がぶつかったぞ、気をつけろ」◯
⑸ 「肘がぶつかったぞ、この部屋は狭いんだ」×

これら自分の行き詰まった(固定化された)表現のすべてをいったん解体する。自分の無意識を覆して、新たな表現の地平を提示させる。こんなことが凡人のぼくにできるのか?

そもそも作家は自己表現を無意識でするするとやるから作家なのであって、既存の文章をわざわざ検分してその相対化を促す(脱構築させる)行為は、作家ではなく批評家がやるべき仕事だ。

書いてかきまくって、無意識の境地にたどり着いて己の文体を意識して書けるようになる。これが作家だ。

才能無きぼくが足掻くをよそに、ブンガクは進化を続けるんだろうな。笑。

(800文字)

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