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800字日記/20221218sun/163「飼い主のエゴ」

昼に目覚めると、外の畑の霜は消えていた。

ネコは洋間の床をはしゃぎまわる。「愛猫の相手がいないのだから去勢はする必要はない」飼い主である自分に問いが浮かぶ。呻くような夜鳴き、部屋のあちこちにおしっこをかけるスプレー行動、ネコにとってはいつまでも欲求は満たされない。ストレスは溜まるだけだ。

未去勢は飼い主のエゴなのか? もとを辿れば、ペットをショップで購入する行為は偽善だ。商品のペットは売れ残れば日に日に値が下がる。一部はペットカフェに流れるがあとは殺処分。この構造を解って自分もペット産業の片棒を担いでいると罪の意識を背負うか、自分は一つの命を助けたと都合よく解釈するか。議論の余地はない。

ペットショップ、店員、バイト、飼い主、ブリーダー、ペットカフェ、ペットホテル、ペットフード業者、運送業界、獣医、ペット洋品、ペット保険、クレジット会社、保護犬猫サイト、YouTube、動物愛護団体、殺処分場… 既に自分はペット業界の沼に浸かっている。

一時。陽がさして部屋が温まってくる。外に出るチャンスだと思い「すぐ帰る」とネコの頭を撫で、ロードバイクを担いで外に出る。バイクを転がして歩き始める。

快晴だが肌寒い。京都は冷たいとか凍てるという。それでも川沿いの土手に出ると日向で黄色い菜の花や紫色のホトケノザがあぜ道を彩る。

ばば橋を右に曲がって、夏は背丈がある雑草が繁茂して侵入できない牛舎の裏手の土手のあぜを歩く。河原では鴨の群れが石の隙間をぬって流れる。そのまま視線を対岸に移すと、百二百と鴨が日向ぼっこ。

沈下橋には夏に台風で流れてきた大木が引っかかったまま。水はきれいだ。ロードバイクにまたがってこんどは川を回り込むように右に曲がって家に帰る。

半時間だけの散歩なのに疲れは取れず、布団を敷いてバタンキュー。目覚めて三時。こんどは雪。体調も天気も差が激しい。その二十分後は快晴に。

ネコは、暖かい場所を求めてやってくる。
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