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800文字日記/20220408fri037/テーマ「悪寒、熱中、時間」002

腹に猫が乗る。2時。猫が猫じゃらしを咥えている。猫と遊ぶ。弁当を作る。部屋を掃除する。食事はせず、ロードバイクを担いで外にでる。

快晴だ。雲ひとつない。橋を渡り右に曲がった道の両脇には芝桜が咲く。神社を通り過ぎる頃には汗がふきでている。下校する姉弟とすれ違う。前を歩く姉は俯(うつむ)き、不機嫌そうだ。弟は葉っぱをくわえている。

県道を跨いでなだらかな坂を上る。太ももの筋肉に違和感を覚える。肉離れか。一瞬、頭をよぎる。そのまま峠に入る。竹林から駒鳥(こまどり)と鶯(うぐいす)の鳴き声が聴こえる。二時を過ぎた太陽はまぶしい。汗がふく。寒気を感じる。急坂になる。息があがる。汗はさらにふきでる。一旦とまってタオルで汗を拭おうとするがそのままペダルをふむ。曲がりくねった坂を上る。体が温まる。道は平らになる。直線は風が心地よい。高速に入る十字路をすぎる。ポカポカ陽気だ。悪寒(おかん)を感じる。腕を見る。毛穴から出る汗が玉となっている。顎(あご)から汗がバイクのフレームに滴り落ちる。腹が減る。峠の頂上で止まる。段々畑へ降る坂道に腰を下ろす。弁当を食べる。花桃の花びらが唇(くちびる)につく。峠を下る。谷間の村では横に貼られたロープに三十匹の鯉のぼりがおよぐ。

隣町に入る。剪定された紅要黐(べにかなめもち)は血のように赤い。海が見える橋の下から土鳩がとび立つ。城下町に入る。門前にアマリリスを植える理容院を通りすぎた。

図書館に入る。久しぶりに執筆に夢中になる。好きなことに熱中すると時間を忘れる。図書館をでる。悪寒がぶり返していた。偏頭痛が始まる。スーパーに寄って、取り敢えず惣菜を買い、海沿いを走って帰る。

内陸に入った直線で虻(あぶ)が耳に入って羽音がこだまする。耳の中のすさまじい羽音で逆に無心になる。気が散ると悪寒を感じるが、全力でペダルを踏むと体が熱って、汗が吹きだし、悪寒を忘れる。家をでてすぐに見かけた姉弟を思いだす。弟の早退を姉が不機嫌に付き添う姿だったかと勝手に想像した。(796文字)


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