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800文字日記/20220312sat/008

起きる。4時5分。猫が煩(うるさ)い。夜明け前のベランダに出す。猫が布団に。温かい。昼の時報。起きる。雀の鳴き声。トラクターが台車を牽引する。陽が黄色い。掃除を始める。猫が部屋を走り回る。畳に背を擦りつける。春が来たか。七分丈を履き散歩に。

道に出る。鱗雲(うろこぐも)は消えていて曇り空に。浄水場脇の畔は赤い椿の花弁(はなびら)が。土手の手前で立ち止まる。膝下についた栴檀草(センダングサ)を取って進む。雀が畑を歩く。紋白蝶(もんしろちょう)が菜の花畑を飛ぶ。黄色の菜の花畑に白い菜の花が混じっている。通りかかる老婆は「花は大根だわのぅ、それ以上は聞かんといて」笑って去る。うんこ座の老人がいる。バードウォッチングか。近づくと自転車に乗って去る。人糞(じんぷん)と紙が。

牛舎の裏では牛の糞(ふん)か肥料かの臭いが。風は海から吹く。河一面を覆う芒(すすき)が揺れる。首輪をつけた黒猫が生垣まできて消える。土手の対岸で子どもがキャッチボール。浅瀬で鴉(からす)が羽をバタつかせている。洗われた羽を大きく羽ばたかせ上流へ飛んでいく。

沈下橋を渡る。本を図書館のブックポストに入れる。山手沿いを帰る。戸建の住宅地に入る。男が狭い芝でパターゴルフに興じている。角から女が出てくる。笑い声があがる。頭を下げると女が愛想を振りまく。

住宅地を抜けて右に曲がると白、紫、黄色、橙のパンジーが植わる家の前で老婆が立ち話をしていた。その家の後ろの山肌だけが重機で削れていた。四十メートルはある背の高いクレーン車が停まっている。大きな土嚢(どのう)が積まれ、作業員が歩いている。老婆の一人に訊(たず)ねる。砂防ダムだという。

見たことのない黄色い花が気になってその場でググる。和紙の原料にもなる三椏(みつまた)だ。道の端の蝋梅(ろうばい)の枝を揺らすと蕾(つぼみ)がバラバラと落ちる。この村はみな庭木の剪定(せんてい)が行き届いている。樹齢のある紅梅の木の南側は接木(つぎき)で白梅が空へと咲いている。水墨画の五葉松のようだ。梅の枝の上で鳥が鳴いた。鶯(うぐいす)だった。春が来ていた。(799文字)

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