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【小説】いかれた僕のベイビー #43
「……あー、やばい、……嬉しすぎる」
感動に打ち震えるオレに対して潮音ちゃんは状況に頭が追いついていないのか放心状態だ。
ここぞとばかりに気になっていた事を問い掛ける。
「ねぇ、潮音ちゃん、いつからオレの事好きだった?」
こんな事、多分今のタイミングでしか教えてくれそうにない。
「それは……、何となく気になり始めたのは、今思えば、事務所で藤原さんと昭仁さんが話しているのを聞いてしまって、私の事を抱くつもりはないって、内容が内容なだけにずっと頭に残ってしまって、その後その言葉の本当の意味と藤原さんの気持ちを知ってからは、かなり意識してしまってて……」
「そうなの?気持ち伝えてからは少しは意識してくれてるなぁって思ってたけど、そんな意識してくれてたんだ」
「……しますよ。……それから、優菜さんと、会ったと電話で言われて、……また歌詞が書けなくなるかもと思うよりも先に、そんなに好きだった人と再会してしまったら、気持ちが再燃してしまうのではないかと、……そう思ったら居ても立ってもいられなくなって……」
「え、オレと優菜が寄り戻すかもって思ったの?」
「……だって、それくらい好きだった人なら、あり得るのかと」
「無いよ」
「今ならわかります、……けどその時はそう思ったんです。それで、そんな事考えて焦ってた自分にちょっと驚いて、それであの時私、少しイライラしていたんだと思います……」
「……それって、やきもち焼いてくれてたって事でいいの?」
さっきからニヤけ顔をまったく隠せてないオレのそんな言葉は軽くスルーして潮音ちゃんは話を続ける。
「……それから、昭仁さんとの事も、私より真剣に向き合ってどうにかしてくれようとして、……気持ち悪いと思われてもおかしくないのに、それどころか、こんな私を受け入れて、好きだと言ってくれて、……どう考えたって、こんな人他にいないって、そう思ったらもう、とっくに頭の中は、藤原さんの事でいっぱいでした。……聞いてます?」
「……ごめん聞いてる、聞いてるからこんな顔になるんだって、……ダメだ、顔戻らない」
「真面目に話してるのに。……前から思ってましたけど、藤原さんて、ちょっと意地悪ですよね」
「あー、アミちゃんが言うにはオレのやってる事は小学生レベルらしいからね、好きな子に構ってほしくて意地悪しちゃうアレね。だけどせめて高校生レベルにならないとなぁ、小学生じゃ手も足も出せないし」
「あんまり変わらない気がしますけど。……でも、恋愛初心者の私には、ちょうど良いのかもしれません。経験無いですけど、十代の恋愛みたいで、ちょっと楽しいかも」
そう言って、本当に楽しそうに頬を緩めた。
その柔らかい表情に更に胸が高鳴る。
「……まぁ、確かにこういうのも楽しいけどね、……でも、やっぱり大人の恋愛しよう?」
ソファに座ったまま改めて潮音ちゃんに向き直り、彼女の顔に手を伸ばして眼鏡を外しテーブルに置く。
「知ってると思うけど、オレずっと我慢してたからね、もう限界。………キスしていい?」
オレの言葉に彼女は恥ずかしそうに顔を背けた。
「……そういうの、いちいち聞かないでください」
「でもいきなりしたらそれはそれで怒りそうだし」
「そんな事ない、……!」
もう一度オレの方を向いた潮音ちゃんを抱き寄せてキスをする。
ようやく触れられた柔らかい唇の感触を確かめるように優しく啄む。
「……ずるい」
唇が離れると赤い顔で恨めしそうにそう呟いた。
「なんとでも言って、でも、……全然足りない」
頬を撫でてからその手を首の後ろに回しもう一度、唇を合わせる。
今度はもっと深く、舌を滑り込ませ歯列をなぞり舌を絡め合う。
角度を変えて何度も何度でも貪るように、……だけど、……まだ、まだもっと、もっと欲しい。
唇が離れ唾液が二人の間で糸を引く。
「………ベッド、行こうか」
肩で息をし、更に熱を帯びた瞳でオレを見つめ返しながら彼女は小さく頷いた……。
これ、想像以上にヤバイな……。
ベッドの上、胸を露わに横たわる彼女は、普段の姿の数倍妖艶で魅惑的で、美しかった。
こんな時に思い出したくもないのに、自然とあの人の言っていた言葉が頭をよぎる。
――脱がすと実はかなりエロい――
くそっ、悔しいけど、その通りだな。
正直、頭の中で何度も思い描いてはいたけど、その想像を遥かに凌駕している。
「……あんまり、見ないでください」
そう言って恥ずかしそうに身を捩りオレの視線から逃れようとする。
「ダメ、もっと見たい」
「あ、……やだ……」
両腕を掴みベッドに押さえ付けると切なげに目で訴えかけてくる。
堪らないな、……なんとなく、思ってはいたけど、ここまで加虐心を煽ってくるタイプだったとは。
もっといじめてみたいけど、最初からやり過ぎるのは、良くないよなぁ。
「……あの……」
「ん?……なに?」
「今更ですけど、……曲作りは、いいんですか?」
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