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お洋服やさん(S.Kちゃん)

この記事は2021年2月28日にホームページにて掲載したものです。

「これ使ってもいい?」
ダンボールの空き箱を見つけて、なにやらSちゃんがひらめいたみたいだよ。
僕の「いいよ」の返事よりも先に、「これでレストランをつくろうかな~」とかなんとか、つぶやき始めている。

Sちゃんのひらめきはいつもかわいい。小さな小さな電球が、彼女の頭の上にパッと輝くのが、いつも僕にも見えるのだ。
そして思いついたそのひらめきをすぐに形にしようとするところがSちゃんのいいところ。

さっそく、ダンボール箱をハサミで切り開いて、お店の土台作りから始めた。

お店のフロアには黄色の画用紙を敷くことにした。ハンバーガーのレストランにするんだって。
まずは注文を受けるカウンター。ペンを使って絵で描き始めた。
ここからどうやってお店を作るのかなと気になって様子を見ていると、ふたたび「そうだ!」とSちゃん。何かをひらめいたみたいだよ。

「2階建てのレストランにする!1階で注文をしてね、階段を上がって、2階で食べるの。」


いいアイデアだね。面白い。見晴らしのいい2階席で食べるハンバーガーは格別にうまそうだ。
Sちゃんは余ったダンボールを貼り合わせて、あっというまに2階をこしらえた。階段を作るのは、なかなか難しそうに困っていたので、Sちゃんのイメージを聞きながら一緒に手伝った。
そうして階段が出来上がったところで、Sちゃんの頭の上に浮かぶアイデアの電球が再びパッと光るのだった。

「そうだ!2階はやっぱりお洋服やさんにしよう! 1階でハンバーガーを食べたあとでね、2階でお洋服を見てもらうの。」


僕は手を叩いて感激した。本当に素晴らしいアイデアだと思わない? 最近の流行りのお店みたい。とても良い構造だ。ドキドキする。

ここ数年前くらいから、2階にセレクトショップがあるような作りのカフェをよく見かけるようになった。街を歩いていて、ははぁなるほど、そういうアイデアもあるのかと面白がっていたけれど、それをついこのあいだ生まれたばかりのSちゃんが思いつくなんて。
カフェはカフェ、ブティックはブティック、だなんてついつい区切ってしまいそうだけれど、そんな僕みたいな頑な考え方はズバリ、時代に遅れてるね。(笑)
子どもたちの感性って本当にやわらくて自由だ。そしていつだって夢がある。


Sちゃんはカラーペンを使って、色画用紙にお洋服をたくさん描いたよ。
1つ1つ丁寧に。ブラウスの襟、ボタン、ステッチ、肩のパフ。それぞれをとても丁寧に。
出来上がった洋服を一枚一枚よく見るとね、パターンもデザインも全く違うんだ。
Sちゃんの頭の中にはどれほどのアイデアがあるの? まったく感心してしまう。

素敵なデザインの洋服を6枚ほど描き上げたあとで、Sちゃんの手がぱったり止まった。
どうしたんだろう。何か考えごとでもしているのかな、と思い、Sちゃんに声をかけてみると、彼女はすごく申し訳なさそうに、僕にこう言ったのだ。

「あのね…じつはね~…あきちゃったの……」

僕は思わず笑ってしまった。(笑)
いや、失敬。ついまた新しい電球が光るものだと思っていたから。(笑)

1時間半ものあいだ、集中して絵を描いたもんね。その幼い年齢で、こんなにも細かい絵を描けたら上出来だよ。
Sちゃんは少しおやつを食べて、休憩をすることにした。


満足そうにおやつを食べお茶を飲みリフレッシュをした後で、Sちゃんは自然と机に向かって、また洋服の続きを描き始めたよ。

そうして仕上がった洋服の数はなんと20枚! どれも、次期S/Sの新作だ。すごく見応えがあるね。


最後に、かわいい店員さんを3人、Sちゃんの得意なタッチで描いた。最近人物を描くのがとても上手くなってきている。
いらっしゃいませの明るい声が今にも聞こえてきそうな、ハイセンスなショップ店員さん。


階段を上がったお店の入り口には、Sちゃんが時間をかけて描いた、いちばんお気に入りの華やかなドレスを飾ったよ。
(Sちゃんがおやつを食べている間に、彼女の姉Tちゃんがスタンドを作ってくれていたのだ)


入り口の階段には、お店の看板を立てた。
店名は、【つまむ Syopu】に決めたんだって。

Sちゃんのかわいいアイデアが、とてもとても輝いた一日だった。

たくさんのお客さんが来てくれるといいね。

それにしても……、【つまむ】っていうネーミング。なんなんだろ。(笑)
セレクト、とか、ウィンドウショッピング、だとか、お気軽に、だとか、なんだかそういう含みのある次世代的な大人顔負けのオシャレなワードセンスが、とってもとってもくすぐったい。(笑)

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