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たぶんおなじ曲を聴いている_20190629

グラスの、細いふちに立っている。

すこし青みのあるガラスでできた、きれいなグラスだ。そこにはなみなみと白の濃い牛乳が注がれていて、わたしはそれを横目に見ながら慎重に足を踏み出す。水面にわずかな波紋が生じる。牛乳の、水とはちがう質感に戸惑った。

このまま、じょうずに歩くことができるのならば。でもわたしは、ほんのひとつまみの不安や弱さで、ぐらぐらとバランスを崩す未熟な人間だ。憎くて憎くて、たまらない。

バランスを崩し落ちて仕舞えばきっと、濃ゆい液体のなかでは目も開けられない。息もできない。体内は白の液体で満ち、しばらくすればわたしと、牛乳との境い目がゆるやかに消えてって、それで、それで。

携帯や財布、家の鍵、シルバーの指輪、猫をなでた感覚など、大事なモノはすべて沈むだろう。

ほんのすこしの甘みがぜんぶ、苦しみにかわる瞬間を、わたしは知っている。怖くて仕方がない。周りを見れば、わたし以外のみんなはじょうずに歩いていて、わたしは呆然と歩みを止めているような気もする。じょうずに歩けないのは、生まれや育ちのせいだと甘えてしまいたい。とても弱くて、潰してしまいたい。

「もういいですよ、辞めちゃいましょう」って言って、誰かに首をシめてほしい。安心してしまう。馬鹿なんだよ。幸せになることがしんどいなんてほんと、馬鹿みたいなわたしがこの夜をまだ生きている。たぶんおなじ曲を聴いている。

- aoiasa
20190629


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最後までありがとうございました。 〈ねむれない夜を越え、何度もむかえた青い朝〉 そんな忘れぬ朝のため、文章を書き続けています。わたしのために並べたことばが、誰かの、ちょっとした救いや、安らぎになればうれしい。 なんでもない日々の生活を、どうか愛せますように。 aoiasa