11/24 兼好でも

『徒然草』をちびちび読み続けている(もう何月読んでいるのか)。兼行は一級の知識人であり、常識人である。高い教養と道徳性が文章の端々からにじむ。であるわけだが、しかし章段の中には、女性や身分の低い人々への差別意識がにじむものもあり、ぞっとする。無論、差別そのものへの嫌悪感もあるが、同時に、兼行ほどの、これほどの人物であっても差別をし得る、その人間の現実への恐怖が、ぞっとさせる。

現在の価値観で兼行を断罪するようなことは避けなければならないだろう。しかし、このことは、現代を生きる私たちが、いかに倫理的であろうとしたとしても、後の世から見ればぞっとするような思考をし得ることを示しているはずだ。未来の思考/思想が正しいというような話ではなく、正しさの追求とは、正しくないかもしれない可能性を追求することなのかもしれないなどと、兼行の、「正しい」からこそ余計におぞましい書きっぷりを見てそう思わされる。


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