発酵文化の再発見

「すごいぜ!発酵」読みました。

「日本発酵紀行」を読んでから、毎日ツイッターの呟きを見にいくなど、小倉ヒラクさん信者なので、普段買わない雑誌を買って読みました。千円以上するってお高めだね。余裕のある層向けってことだね。

発酵文化に興味があるなら読んでほしい

雑誌だけど、今現在の発酵関連カルチャー(学術的な部分ではなく、一般消費者に向けて)を網羅してる保存版だ!と思いました。SNSとかでチラ見して気になってたお店もあり(高い)、写真を見てみたかった発酵食品たちのまとめもあり、何より意外と発酵食品とその周りのカルチャーについて体系的にまとめられていて、そうそう!こういうこと感じてたんだよって腑に落ちた感じ。

応用微生物からのバイオテクノロジーの話だけではなくて、各地の文化を拾い集める話、全く発酵とは遠いと思われるような人たちが注目を深めていること、若手醸造者のアートを利用した取り組みとか、幅広すぎてよほど好きじゃないと網羅できないんじゃないか?とも思える発酵カルチャーの広がり…(個人的には好きなものと好きなものが手を組み始めたように感じています)

ちなみに私が最近発見したなという発酵食品は三河本みりんです。これは最上級の米リキュールだと思います。ふつうにロックで飲める。(みりんです)


「発酵」の複合的な魅力

醸造微生物を学んできて、昔から長いこと受け継がれてきた発酵文化が意外と科学的に解明されていないこと、微生物の働きを制御するために醸造者はめちゃくちゃ苦労していることを知りました。雑誌の中でもヒラクさんがお話しされてたけど、麹とかゲノム情報わかったけどどんなことしてるか中身についてはこれからという感じ。

微生物の話なら、

酵母と乳酸菌がなんだか仲良くよろしくやってるじゃないというカルピスみたいな複合菌叢とか、

乳酸菌と硝酸還元菌に仕事させて雑菌の混入を防ぐ清酒の生酛造りとか、

麹による糖化と酵母のエタノール発酵を同時に行うことによって高アルコール度数の酒造りを可能としている日本が世界に誇る並行複発酵とか、

微生物の要素が多いから一筋縄じゃいかない感じ、めちゃくちゃ面白そうじゃないですか?要素が多すぎて難しいけど、人が何か手を加えることで、その分広がりが凄いんだと思うんです語りたい。(というかちゃんと醸す仕事就きたい)

ただ、ここまでは応用・醸造微生物学の話で、これからの面白いところは「人がどうやって発酵文化に介入していくか」だと考えてます。

発酵文化があること、これから継がれていくこと

wired japanで記事になってたの今検索して見つけて、ええあったんか読みたかったわという気持ちなのですが、てか元々Spotifyのポッドキャストで見つけたんだった。

ぬか床を元にしたコミュニケーションの話だったりです。凄く好きなんですこの話。

情報学者のドミニク・チェン先生がぬか床の状態をモニタリングするシステムをつくりながらも、手を加える工程は自動化せず、あくまで人が手を加えるということにされているのが興味深いし共感してます。

わたしはそんな専門家でもないですが、実際に現場で醸造の様子を見たり、麹作ってみたりして、再現性全然できないしというか蔵の人の経験が未だに有効だ…と驚いています。それに、地酒や各地の食文化について興味を持ってから、地域の多様性が多くて、ここでしか受け入れられない味、造り方、でいっぱいだなと興味を持っています。

座学しかしてなかったころは、これだけバイオテクノロジーが進んでるんだから経験よりもデータ取って安定生産のために画一化するべきだろって思ってたんですが、そういう訳でもないな、むしろこれだけ各地に存在する醸造所や発酵物の個性が、この時代に残っていること、誰かが引き継いできたことに注目すべきだなと考えるようになりました。各々が続いていくために何をするか独立していかなきゃならんとは思いますが。

いま、発酵文化が再発見されている、ということは新たに手を加えるタイミングが来ているんじゃないかと思います。

ぬか床をひっくり返して空気入れて、野菜くずとか香辛料入れるみたいに、これまで関わって来なかったカルチャーが介入してきて、これまで食べてこなかった人が食べ始めて、新しい流れが作られてきていると感じています。もう始まって数年経ってるとは思いますけど…。(この雑誌の読者層みたいに、ある程度余裕があって食に関心があってお金と教養かけられる人がこれからのターゲットなのかな。)

食文化は注目を集めるとともに、多様性と人口減少で無くなる可能性は大いにあります。 無くさないために何をするか、生産、販売をしている人だけじゃなくて、研究者や消費者も何と何が繋がってるか考えていいと思います。売れなきゃしょうがないけど本当に良いものは残していきたい。本当にいいものをせっかくだから見つけてほしい。

分野横断的な学び方は大学で行われて久しいですけど、食文化ほど人の生活に密接なことはあまり無いと思うので、発酵と様々なカルチャーがかき回されている中で何かわたしもかき回してみたい…。もやもやしてるけど。

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