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白昼夢


いつからだろう。

空に落ちる夢を見るようになったのは・・

 
自己を認識できるようになった年齢か。周りと比べるようになった時か。鏡を見つめるようになった日だったか。
もう、覚えていない・・・

空高く飛んでいる、私とは違う生き物を、うらやんでばかりいた日々にウンザリしていた。

空がどんな景色か見てみたかった。
でも、どうしても、飛び方が分からない。

 
だから、飛ばずに、落ちることにした。

 
上がることは出来なくても、落ちることはできると思った。
 

 
意外と簡単だった。

心の重力を解き放てば、すんなり落ちていった。
 

逆さまだったけど、飛び回ることは出来なくて、ただ落ちるだけだったけど、見たことのない景色を少し感じることが出来た気がした。
 

 
それから私は、時々、空を見上げ、空に落ちる夢を見る。

鏡に手を合わせ、鏡の向こう側から見た世界を想像する。


悲しみも喜びも、美しさも醜さも。
すべてが、逆さまの世界なら、私は救われたのかな?
 

当たり前の言葉の繋がりをほどき、もしもの文字の羅列に手を伸ばす。
 

 
空に落ち、海を飛ぶ。
美しき色を聞き、心地よい音を見る。
 
 
キラキラと光る水面を、ひた走る私は、いつか何者かに、なれるのだろうか・・

 
 

 
 


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