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言いまちがっても いいんじゃない?

息子(7歳)は時折絶妙な「言いまちがい」を放ちます。
どこかで耳に入った言葉が彼の中で咀嚼され、変化して自分の言語となって飛び出す。中にはこれは絶対聞いたときに自分でも言ってみたいと思ったんだろうと思われる言葉もアリ。そう考えると余計おかしく、かわいく感じます。
言い間違いは私の大好物なので、毎度そのまま会話を続けながら忘れないようにこっそりIphoneにメモします。

くさくさして眠れない夜なんかに、そのメモを開いてくすっと笑うのは癒しの一つです。

「もうさぁ、パチコン行けばいいじゃん!」 正解:パチンコ
お笑いの番組をみていたある日。オチでどっと笑いがおきたあとで、彼なりのつっこみをいれたのだけど、違いますよ。
(これは言ってみたい言葉だったと推察。)


「もういっこ 、たくやん食べたい ! 」 正解:たくあん
漬物好きの息子ですが、私がその日の夕餉に出したかつお風味の沢庵をいつもの言い方「おつけもの」と言わなかったので。
たくやん…友達?!


でもふと思うのは、人それぞれ耳から入った音が、個々にどう聞こえているかは確かめようがないことで、「たくあん」を「たくやん」と聞き違えるのは、母音の「あ」のヒアリングが「や」(子音+母音)に近く聞こえ、彼にはそう聞こえたのであればの正解なのではないか、などとどうでも良いことを考えたりします。
公文の教材を使った英語のヒアリングなんかを聞いているととても面白いのです。書かれている英文はまだちゃんと読めないので、彼にとっては機械から流れてくる発音をどう聞き取るかが大切。

I  go to bed at nine.
アイ ゴじゅ ベラアッ ナイン.  (息子の聞き取りメモより、まま抜粋)   

息子にはこう聞こえるのか。いや!でも…なるほどね、ふむふむです。
ネイティブに伝わるのはどっちなのかという正解が私には無いので、なんだか指摘してしまいそうなのをぐっとこらえて、見守ることにしています。

「パチコン」はトトロのメイちゃんの「とうもころし」的な音の入れ違いで、それはまた一味違う。幼児から小学校低学年ぐらいまでに見られる可愛らしい覚え違いなんだろうと思い、こうして忘れないように記録して愛でているのです。


先日、梶井基次郎の「檸檬」を読んでいたら、”城のある町にて”の中で可愛らしい言い間違いについて書かれていました。

袖の長い衣服を着て、近所の子等のなかに雑じっている勝子は、呼ばれたまま、まだなにか云いあっている。
『か』ちゅうとこへ行くの」
かつどうや
「活動や、活動やあ」と二三人の女の子がはやした。
「ううん」と勝子は首をふって
『ヨ』ちっとこへ行くの」とまたやっている。
ようちえん?
「いやらし、幼稚園、晩にはあれへんわ」

ここで勝子と書かれているのは、主語である青年の姉の子とあるので、彼にとって姪にあたる女の子と思われます。青年はまだ幼なくて可愛い盛りで死んだ妹のことを落ち着いて考えてみたいと思い、既に嫁に出た姉を頼って田舎へやってきているのです。
ある夏の夕暮に、姉一家と奇術を見にいく道すがらの会話が綴られます。

「勝子」今度は義兄の番だ。
ちがいますともわらびます。
「ううん」鼻ごえをして、勝子は義兄を打つ真似をした。義兄は知らん顔で、「ちがいますともわらびます。あれ何やったな。勝子。一編峻さんに帰化したげなさい」
泣きそうに鼻をならし出したので信子が手をひいてやりながら歩き出した。
「これ‥‥それから何というつもりやったんや?」
これ、蕨とは違いますって云うつもりやったんやなぁ」信子がそんなに云って庇護ってやった。

声に出して読んで、なるほどと思って笑ってしまいました。
言った方は真剣なのですから、可笑しくからかわれておへそも曲がる。
息子も指摘されると恥ずかしいようで、話題を急に変えたりして惚けたりします。

今も昔も子供の言い間違い、聞き間違いは愛しいものです。


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