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「絶望名人」って、私のことかと思った (読書感想文)

死にたいという願望がある。
そういうとき、この人生は耐えがたく、
別の人生は手が届かないようにみえる。
イヤでたまらない古い独房から、
いずれイヤになるに決まっている新しい独房へ、
なんとか移してほしいと懇願する。
『絶望名人 カフカの人生論』

かの有名な小説家、
フランツ・カフカの言葉である。
死にたくて、今いる世界から脱獄したくてたまらないのに、死んだ先の世界でも同じような過酷な独房が待っている。
なんてネガティブで、絶望的な言葉なんだろう。

最近、『絶望名人  カフカの人生論』
という本を読みました。
大体、偉人が残した名言はポジティブなものばかりで、前向きにさせてくれるものが多い気がします。


しかし、私がこの本を読んで学んだことは、
「絶望した時には、絶望の言葉が必要」
ということです。


その本では、音楽に例えられて説明されており、
悲しい時には悲しい音楽を聞いた方がいいとあります。
失恋した時、最初から明るく、次の恋愛へとひと押ししてくれるような曲を聞いても、すっと心には入ってきません。
やはり、その時の気分と同じイメージの音楽でなければ、共感は出来ないと思います。

とても落ち込んでいる時に、
「大丈夫だ!なんとかなるよ!」と励まされることも同じ。
応援してくれる気持ちは嬉しいけど、
正直そんなこと言われても...と心には響かないですよね。
それより、共感してくれるような重く悲しい言葉の方が胸をぎゅっと掴まれる感じがしませんか。


この本を手に取った理由は、私が小さいことですぐ絶望するところがあるからです。

私は田舎出身で最近まで知らなかったのですが、
24時間営業していないコンビニが存在することを知った時、この世にある永遠を1つを失ってしまった感覚に陥り、絶望しました。

押しボタン式の信号なのに、ボタンがあることに気がつかず、人が来て押してくれるまでぼーーーっと一生変わらない信号を待ち続けていた時、とても情けない自分に絶望しました。

情緒どうした?と聞きたくなりますよね。
私にも分かりません。
昔からちょこちょこ絶望しています。
絶望なんて大袈裟な表現をしてもいいのか不安ですが。私の中では、大きく膨れ上がった何かに背中を押され、どん底に突き落とされる感覚です。
こんな私だから、過去の偉人が放ったネガティブな言葉に心を奪われたのかもしれません。



カフカの言葉は、全てネガティブですが、
読んでいると共感できることがたくさんありました。

二人でいると
彼は一人のときよりも孤独を感じる。
誰かと二人でいると、
相手が彼につかみかかり、彼はなすすべもない。
一人でいると、全人類が彼につかみかかりはするが、その無数の腕がからまって、誰の手も彼に届かない。
『絶望名人 カフカの人生論』

ここでいう彼は、カフカ自身のことです。
一人でいるのは、孤独を感じますよね。
では二人でいる時の方が孤独を感じるとはどういうことでしょうか。
例えば、自分が好きと言ったものに対して、
相手が否定し、さらに悪いものだと決めつけられたとしたら。
ああ、この人とは分かり合えないな。
価値観が全く違うんだな、と思うでしょう。
カフカはここに孤独を感じているのです。
つまり、上手くやりとりができない、
さらに言うと、言葉の通じない相手といると、
どうすることもできず、孤独と絶望を感じるのです。


この言葉を見て、私はわかる!と
思わず叫びたくなってしまいました。
私事ですが、最近仕事の人間関係が上手くいかず、
こうしたいという私の主張に対して、
上司から見当違いな返答をされて、頭を抱えました。
何を言っても私の言葉を受け入れてくれないんだろうなと思った時、突然、私は寂しさと悲しさに襲われたのです。
目の前に相手がいるからこそ、
二人でいる時に感じた孤独は、一層大きくなって私を包んでいました。


私のように、日常的に絶望が襲いかかってくる人。
不安や悩み、孤独等を抱えて今を生きている人。
多くの方にこの本を読んでみて欲しいと思います。
カフカの言葉に深く共感するか、
はたまた「こんなネガティブに考えたことない」と
笑ってしまうか。
捉え方は人それぞれだと思います。
それでも、間違いなく言えるのは、


「絶望には、絶望を。」です。

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