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評論

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大学のレポートのような、割とちゃんとまとめたもののような。
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2024年7月の記事一覧

ソウル・ミュージックの俯瞰と時代ごとの軌跡、その意義

ソウル・ミュージックの俯瞰と時代ごとの軌跡、その意義

「ソウル・ミュージック」という言葉が意味する音楽ジャンルについて考える時、私たちはそのルーツや内実の複雑さに困惑する。成立過程や代表されるアーティストについて共通した知識を持ち得たとしても、その認識には微妙な差異が生まれざるを得ないのではないだろうか。本稿冒頭では、「ソウル・ミュージック」の辞書的な意味を紐解き、サム・クック、レイ・チャールズ、ニーナ・シモン、アレサ・フランクリンの音楽をなぞりなが

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「月に吠える」二篇削除の再検討 ―事実関係の整理による読みの可変性

「月に吠える」二篇削除の再検討 ―事実関係の整理による読みの可変性


はじめに 大正から昭和にかけて活躍した詩人である萩原朔太郎は、現在その処女詩集「月に吠える」が最も広く知られている。同書は大正六(一九一七)年に感情詩社と白日社の共刊で出版され、両社の主宰である室生犀星と前田夕暮が発刊に大きく関わった。序文を北原白秋が書いたことでも知られる。

「月に吠える」は北原白秋、与謝野晶子、高村光太郎といった高名な詩人が、また後の時代においても同郷の詩人や評論家をはじめ

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