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あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと

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向坂くじらさんが初めて書いたエッセイ。2017年10月から2018年10月まで、全24回です。
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#エッセイ

あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #10

#10 「テルヨさん」のこと テルヨさん、という人のことを、わたしはほとんど何も知らない。…

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あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #16

#16 窓付きのこと インドアなわり、アニメや漫画やゲームに造詣が深くない。 気質じたいはま…

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あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #3

#3 酔いつぶれた見知らぬ女の人のこと 大学受験の塾の帰り道、改札前で女の人がうずくまって…

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あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #5

#5 ほとんど話したことのないクラスメイトのこと 世界憎み力(せかいにくみりょく)、みたいな…

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あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #4

#4 塾に来なくなった生徒のこと いきなり特技じまんになるけれど、わたし、人より待つのが得…

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あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #6

#6  弟のこと 五歳離れた弟がいる。たったひとりの弟だ。 幼稚園のころ、「きょうだいがほし…

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あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #7

#7   傷つけたかった女の子のこと だれかを傷つけたいという思いが強まると、少女期のわたしはたびたび、ほとんど熱狂に近い昂奮状態に陥った。 小学校高学年から中学生くらいまでだろうか。授業中、傷つけたい相手のことを考え、いたずらに敵愾心を高めて遊ぶ。相手に選ぶのは自分や友だちにひどいことをした教師やクラスメイトが多かった。 実際に行動に移す気はほとんどなかったと思う。悪口を共有したり、仲間を作ったりもしなかった。ただひとりで夢想し、ネットの猟奇犯罪記事を乱読した。そういう

あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #8

#8 手がかかる友だちのこと おまえ、とうとう幸せになるんだね、エモい、いや、超エモいわ…

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あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #9

#9 見知らぬ三十九歳のこと 大人になりそこなってきた、という体感がある。二十三歳までにこ…

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あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #11

#11  もういない人のこと その日、友だちが死んだことを知らせるメールは、朝早く、わたし…

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あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #12

#12  電車のなかで手を握ってきた女の子のこと めずらしく、夕方に帰途についていた。たま…

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あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #13

#13 相方のこと チャーハンはすごい。 この上なくふさぎこみ、わたし以上に生きている価値の…

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あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #14

#14  体の具合のよくない生徒のこと このエッセイを書きはじめて半年になろうとしている。 …

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あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #15

#15 母のこと わたしの知っている花の名前のほとんどは、母の口から覚えたものだ。 母は、売っている花と道端に咲いている花とをひとしく愛する人で、わたしの幼稚園の送り迎えのあいだ、ずっと足もとを指さしながら歩いた。おおいぬのふぐり、はくもくれん、かたばみ、ほとけのざ、ねじばな、わたしもすぐに覚えて、受け売りで幼稚園の友だちにじまんした。 毎年どくだみが咲き始めると、そのころのことをよく思い出す。春を終えて梅雨に入る前、ちょうどいまごろだ。 「どくだみはくさいから嫌われて