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ショートショートを書いてみたくて


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 我が母校の私立S学園高校には、ちょっとした名物がある。
 吹き抜けになった広い昇降口ホールの天井が、一面水槽になっているのだ。
 なんでも、何代か前の理事長が某水族館の「海の中道」をいたく好んでいて、老朽化した校舎の改築ついでに私財を投じて作り上げてしまったのだという。

「その子、センセーが高校生の時もいたんですか?」

 教育実習生活も折り返しを迎えた日の、午前7時。
 私は最終日の研究授業の指導案作成が全く進まず、慣れない早起きをして学校に出てきたところだった。
「早いんやね、野宮さん」
 彼女はホールの奥に置かれたベンチに座っていた。何度か授業したクラスで一番前の席に座っていて、授業中の発問によく答えてくれる子だった。
「うちバス圏外だから、始発に乗らないと補習間に合わなくて」
 彼女は苦笑して立ち上がり、こちらに歩み寄ってきた。
 二人して見上げると、「その子」は天高く——否、ガラス張りの天井に向かって、勢いよく浮かび上がって行ってしまった。
「この子は……どうやったかな。もう記憶が曖昧やわ」
「えーうそ、センセーまだそんな年取ってないっしょ」
 やがてスクールバスが到着したらしく、次々と生徒が校内に流れ込んできた。朝の陽射しが照らすガラス越しに、揺らめく水面の影を浴びて。
 そんな光景にも慣れきってしまった生徒たちは、
「おはよ」
「おまえ今日絶対当てられるって」
「やっべー」
「朝ごはん食べれんかったぁ、お腹鳴るかも」
 適当なお喋りをしながら、教室への階段を上っていく。
 ひととき訪れた喧騒が遠ざかったころ、水の泡をまとった「その子」は再びこちらの目線の高さまで舞い降りてきてくれた。

 ——きみ、あたしのこと覚えてる?

 そんなセンチメンタルに浸る暇もなく、補習の開始を告げるチャイムが鳴った。


---------------(未完)


何も起きていないのに既にそこそこ長さがある。書くのも読むのも楽そうなショートショートに憧れて始めたのに。
オチ迷う。暗くするか明るくするかすら迷っている。

学校嫌いだけど、やっぱ学校ものは書きやすいんだよなーなんて思いながら眺めている。いつか完成するといいのだが。

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