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Drive me Higher 07:記憶の襞

「びっくりしないでね……」

チョコレートブラウンのしんちゃんをバッグから取り出すと、

ジョージは困惑とも侮蔑ともつかない表情でそれを見つめていた。

いや、そんなのこっちの思い込み。

ジョージは、なんにも見てなんかいない。

お願い、私を見て……。

私はワンピースの下にしんちゃんを潜り込ませ、

ショーツの上からアソコにあてた。

ジョージに汚されたお気に入りのブルーのワンピ。

その瞬間、コバルトブルーの海が流れ出す。

リーフの先の、水深100m超えのドロップオフじゃないと出せない透明で深いブルー。

どこで見た光景だろう。

ギリシャのサントリーニ島か、エジプトのダハブか……。

ダイビングが趣味だった学生時代がなつかしい。

旅に寄りかかっていればよかったあの頃。

ここはどこ?

このまま、私はどこかへ行ける?

スイッチを入れるとしんちゃんが静かに動き出す。

身体の芯に小さな炎が灯る。

そして、じわりと熱いものがせり上がってくる。

誰か、おっぱいを触ってほしい。

かたくなった尖端をやさしく、やわらかい指で。

そこにいるのは誰? しんちゃん? 違う……。

マリファナが効いているのかもしれない。

なぜか恥ずかしくない……。

大胆になってもここなら赦される。

凪のような紺碧の海に抱かれている気分。

目の前には、なにも見ていない美しい男。

ジョージのツルツルのアソコを思い出すと濡れてくる。

肩紐をズラして、首元から左手を入れ、右の胸に触れる。

おっぱいは小さいけど、乳首はみんなキレイだって言ってくれた。

「アカリさんの裸なら見たい」

ジョージは確かにそう言った。

お願い、私を見て……。

もう一度、キレイと言って。

私はショーツの脇からしんちゃんを導く。

恥ずかしいくらい濡れてる……。

へんな音がするかもしれない。

でも部屋の空気は私をやさしく包んでくれる。

甘く溶け出す時間。

密度はどんどん増すけれど、息苦しくはない。

羊水のように深くて碧い沈黙。

私は、しんちゃんに力を込める。

まるで私は、大きな1本の木だ。

太い幹から枝へ、温かい背徳が広がってく。

媚薬が身体に浸透していくような恍惚。

しんちゃんが私を満たしていく。

私は深い碧に潜って、息を止める。

もっと深く、深く、深く……。

「あっ…んっ……」

絶頂は前触れもなく訪れた。

脚が震えて、動かない。

ショーツが濡れてしまったかもしれない。

ダメダメ……なにしてるの。

息をするために水面の光が揺れる場所を探す。

ジョージの目が見られない。

私はうつむいたまま、言葉を探す。

でも、見つからない……。

しんちゃんのスイッチを止め、顔を上げる。

「どうしたの?」

それしか言葉は見つからなかった。

ジョージは、泣いていた。

壊れた傘みたいに悲しそうに。

そして、絞り出すようにこう言った。

「思い出したんだ」

(つづく)

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