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鈴木おさむ「もう明日が待っている」。

鈴木おさむさん「もう明日が待っている」。

一応“小説”というテイをとっていますが、SMAPのことを書いている本だというのは言わずもがなで。

鈴木おさむさんといえば、あの「SMAP×SMAP」の放送作家を務めていたことで知られ、その他にも各メンバーが出演するテレビやラジオ、ライブのコーナー演出に至るまでかなりガッツリSMAPと一緒に仕事をしてきた方。「最も長い間、SMAPの近い場所にいた裏方さん」と言っても過言ではないと思います。

そんな鈴木おさむさんがSMAPについて綴った本を書いた。それも、放送作家を辞めるこのタイミングで。

『小説「20160118」』

これに先立って、2023年の初めに文春オンラインに掲載された『小説「20160118」』。

掲載されてすぐに大きな話題にはなっていたのですが、その内容を読むのが恐くて僕は躊躇していました。

細かい経緯はどうであれこちらはその結末を知っていてハッピーエンドではないことは明らかだったから。あとなんか文春にお金を落とすのがイヤで。苦笑

しかし、それまでにSMAP縛りのDJイベント等を企画させてもらっていたご縁で繋がっていたダイノジ大谷さんから直接この“小説”を薦められ、「SMAPファンなら読んだ方がいいと思うよ」と教えていただいたので読んでみたという次第です。

いざその文章を読んだ僕の感想としては、その内容は日本の芸能史に残るほどの最悪な出来事で、特にSMAPファンからすると本当にトラウマ級の事件だったのですが、鈴木おさむさんご自身の反省や汚点のような部分も包み隠さず、愛をもって綴ったその文章には嫌な気持ちは起こらず、むしろ今よりもっとSMAPのことが好きになるようなそんな文章だったのでした。

◆小説「20160118」(文春オンライン)



鈴木おさむさんが適任だと思った

それを踏まえての「もう明日が待っている」ですが、本編に触れる前に一応 僕自身の立ち位置を書いておきたいと思います(そんなこと誰も興味ねーでしょうけど笑)

この本が出版される際、または放送作家を引退されたあのタイミングでいろんなメディアに出演してSMAPのことを語っていたおさむさんにネガティブな印象を持ったSMAPファンの方もいるかもしれません。「今になってSMAPのことを色々暴露していてちょっとイヤだ」みたいな。

しかし、僕は今回おさむさんがこの本を書いたことを肯定したいし、SMAPファンとして有難いと思いました。

ここまできたらファンのみならずとも解っていることだと思いますが、SMAPのメンバー本人達は頑なに語ろうとしません。特にあの時期のことは絶対に。恐らくその先もそうだと思います。

これまで長い間ファンのことを一番に考え、どんなことがあっても自身の口からその想いを語ってきた彼らが、これだけのことになっているのに誰一人語ろうとしない。それはまるで、(マネージャーさん達も含め)お互いがお互いを守り合ってそうしているかのようにすら感じます。

でも、やっぱりそれだけではいけない。誰か一人くらい“語り部”がいてもいいのではないか。それは、この先の芸能界にとって何かプラスになることかもしれない。

それをSMAPのメンバーや飯島さんがするかといったら絶対にしないと思う。(個人的に飯島さんの本はメチャクチャ読みたいです)

その上で、SMAPの長い歴史とあの出来事のことをリアルに、上手に、愛をもって書けるのは鈴木おさむさんしかいないのではないかと僕は思います。

彼も多数のバラエティ番組を手掛けてきた放送作家さんなので、インタビューやメディア等で多少の“ケレン味”というかゴシップ的な言い回しや表現を使うことだってあると思うのです。

いくら長年の一緒にやってきた盟友といっても別にSMAPの親とかではないのだし。彼には彼なりの道理やクリエイティブがあると思うので。お互い大人でビジネスパートナーで、いくらなんでもさすがにそこまで100%クリーンではないでしょうが、と思うし(もちろん犯罪とかそういうことではなく)。

そのあたりを諸々踏まえた上で、僕は賛成だし実際本を読んでみてその気持ちは間違ってなかったとハッキリ判ったのでした。


本の感想

随分と前置きが長くなりましたが肝心の本の感想を。

“リーダー”、“タクヤ”と同い年である“オサム”が中学生の頃、光GENJI(のような男性アイドルグループ)の快進撃を目の当たりにした時代からこの物語はスタートします。

光GENJIブームを経て、その後にデビューした6人組の男性アイドルグループ。当時大学生だったご自身の年齢も相まって「光GENJI(のような男性アイドルグループ)のときとは違い、この6人には嫉妬の気持ちは生まれなかった」と感じたオサム。

つまり世間的にもアイドルブームはひと段落していて、なんなら「アイドル」という存在自体が嘲笑されるような存在ですらあったと。

よく「音楽(バンド/アイドル)ブームとお笑いブームは交互にやってくる」なんてことを聞きますが、90年代初頭なんてそれこそブルーハーツやユニコーン等のカリスマ的なバンド達が出てきて、お笑いではとんねるずが人気者になっていき、さらにはダウンタウンが台頭してきたような時代でまさに「アイドルなんて」と言われていた時代だったということが分かります。

そして数年が経ち、思いがけずそんな彼らと仕事をするようになったオサム。

彼らや“イイジマサン”とのエピソードが、これまでに起こった色々な“事件”に添えて赤裸々に綴られています。

僕自身、小学生の頃に「がんばりましょう」がヒットし、高校受験のときに「夜空ノムコウ」を聴いていた世代とあって、これまでの彼らを取り巻くアレコレには一つ一つ反応してきたと思いますが、この本でもいわゆる「タクヤの結婚」や「モリクンの脱退」、「ゴローチャンの逮捕」等々の事件が起きたときの様子が生々しく綴られているんですよね。

それは、ある場面では僕らのイメージ通りの彼らだし、時にはそれよりもさらに深いところで言動が読み手に対して「知られざるエピソード」として届けられます。

細かい会話の中で彼らが当時抱いていた想いや、その周りにいるスタッフの皆さんの悲喜こもごもが感じられてとても読み応えがありました。

あと「ソウギョウシャ」って凄い言い回しですよね。例の時間のときの彼らの言動には本当に腹が立った。嫌悪感しかない。


さいごに

“小説”と謳っているのはカモフラージュの意味だけではなく、本当に“小説”くらい奇抜で面白い物語なのだと妙に納得したというか。

この本を読めば鈴木おさむさんがただの金儲けや自己顕示欲で暴露している本ではないということがハッキリ分かると思います。(実際に“SMAPイズム”でこの本で得られた収益を被災地に募金したりされていますし)

あと何よりSMAPのことが今よりもっと好きになる。SMAPの活躍と同じ時代に生きてこられて本当に良かったと心から思いました。

鈴木おさむ 「もう明日が待っている」。

SMAPが好きな人はもちろん、僕と世代が近いエンタメ好きな人にはぜひ読んで欲しい一冊です◎


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