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特許の引用・被引用分析による新規事業探索

「知財情報を組織の力に®」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎です。

先日note有料マガジンで「特許情報から自社にとって脅威となる企業を抽出する-被引用分析の活用

という記事を投稿しました。

上記の記事では特許の被引用分析から自社の脅威となる企業を抽出する方法について解説しましたが、特許の引用・被引用分析はいろいろな場面で活用することができます。

K.I.T.虎ノ門大学院の杉光先生の研究室の学生の方が、「IPランドスケープを用いた新規事業探索モデルの検討-富士フイルムの「化粧品事業」探索への応用-」という研究論文を日本感性工学会論文誌に投稿されているのを発見しました。

この論文ではシクロハイジア小林さんの

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サイテーション法の親子ミックスをベースとした新たな新規事業探索用の引用・被引用分析方法であるミラー法というものを提唱しています。

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被引用の中でも非競合他社のコア技術に着目して、それが自社の非コア技術との関連性がある場合に、新規事業や既存事業強化に適用できるのではないか、というコンセプトです。

単なる引用・被引用分析ではなく、引用・被引用先の自社との関係性(競合・非競合)、引用・被引用先のコア・非コア技術の違いも含めている点がユニークだと思います。

この手法を富士フイルムが2000年代前半に新規事業として始めた化粧品事業アスタリフトへ適用して検証しています。

分析方法・ステップについても非常に細かく記載されているので、特許情報をベースとし新規事業探索を行いたい方には参考になると思います。

なお、富士フイルムの化粧品事業参入については、他の研究会等でも特許分析のテーマとして取り上げられたり、データベース・分析ツールベンダーさんの事例でも利用されることがあります。

特許情報から富士フイルムの新規事業候補として抽出できること自体は間違いないのですが、

実は富士フイルムのライフサイエンス事業をけん引した戸田元取締役副社長最高技術責任者が

化粧品は、実は、戸田が入社当初から手がけたいと思っていた分野。製造技術者時代から、化粧品業界の研究者が多い学会に参加しては、化粧品メーカーから畑違いな存在を訝しがられていたという。「写真フィルムは乳化や分散の技術が使われている。フィルム会社が、この乳化や分散技術を生かした化粧品を作ったらきっと面白いものができると、当時から確信していた」

と述べているように、入社当初から手掛けたいと思っていた事業であることはあまり知られていない気がします。

これをもって上記の引用・被引用分析「ミラー法」の有効性に疑義を唱えるつもりはありませんが、1つ覚えておいたが良いと思うのは特許情報をベースに新規事業テーマを探索して、それが実際にテーマアップされ、事業化に結び付けるのは非常にハードルが高いということです。

最後に、私自身も知財情報分析・コンサルティングで引用・被引用分析なども含めた新規事業開発テーマ探索のプロジェクトを行うことがありますので、今後この「ミラー法」についても試してみたいと思います。

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