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静かなネットカフェ

初めてのネットカフェは、凄く静かだった。 ロングサイズの紙コップに緑茶を入れ、 彼ブースに入る。 私は奥に座る。 帰りの時間を確認すると、 すぐに抱き寄せられる。 無言で、ふぅーと小さく息をつく。 静かだから、耳元でヒソヒソ声で そのまま仕事のことを話すのを聞く。 「そっかぁ…」 多分、アドバイスを求めているわけじゃない。 吐き出したいのだろうと思って、聴くに徹する。 求めたわけでもなく、彼からキスをしてくる。 いつぶりか分からない、久しぶりの感覚。 気持ちが良いよりも

    • ちょっと冷めてます。

      書くなら今だと思った。 聞いてくれそうな人は誰も聞いてくれない話。 1つの恋が終わろうとしている。 1ヶ月半くらいか。 前よりずっと、上手くできたよね。 私、頑張ったよね。 「忙しくてお話しできなくてごめんね(^_^;)」 既読も返信も遅くなって、「ごめんね」ばかり。 まめに連絡ができる人だと分かっているから、 冷めたのだろうということも分かる。 どうしたら時間を作れるか、 どうしたら続けられるか、 どうしたら、どうしたら、どうしたら… 四六時中、考え続けて、 できる

      • 秋の憂鬱

        私は秋に恋をしている。 ふっと秋の風を浴びて肌寒く感じたとき思い出す。 椎名林檎が流れる車内で乱暴に髪を掴まれながら求められたときを 公園で痛いくらいキツく抱きしめられながら「愛してる」と囁かれたときを… 何度思い出しても最高だった。 私は夫を得て、恋を失った。 恋って言うのは、性欲だと思う。 脳内は麻薬に占拠され、強烈に惹きつけられて、 他のものがどうでも良くなってしまう。 この麻薬のおかげで、 私はどれだけのものを失ってきただろうか。 毎年、脳内で同じやり取りが繰り

        • 2日目の帰り道

          2日目の帰りの電車、気を紛らすために書き始めた。 この鬱状態は、職場の人間関係とPMSの複合により起こっていると思われる。 でも…人のことがこれだけ苦手だと思うようになったのはいつからだろうか。 おそらく元々苦手ではあったのだけれども、こんな風じゃなかったはず。 行き帰りの電車はBluetoothイヤホンを突っ込まないと耐えられないし、耳栓を持っていないと不安になる。 誰かにとって気に入らないことをしたら殺されるんじゃないかと思うし、歩道を歩いていても自転車あるいは突っ込んで

        静かなネットカフェ

          電話の中のあなたは誰?

          電話をするたびに思い起こされる。 同じような声、寂しそうな声。 この寂しそうな、かよわそうな 小動物のような声の持ち主を 私は包み込んであげなければ。 安心させてあげなければ。 そう思って、 「よしよし、大丈夫、  もう少しで会えるからね。」 と声をかける。 私が声をかけているのは 本当にあなたなのだろうか。 「この人には私がいてあげなければ」 という感情は あの頃の、彼への感情と同じ気がする…… ご飯は食べられてる? 元気にしてるの? 仕事は続いているの? 前に進めて

          電話の中のあなたは誰?

          ここに来た理由

          その箱を開けてみることにした。 壺かもしれない。 中身があとどのくらい残っているのか 確認するだけでもいい。 できれば中身を取り出して並べてみたい。 既に全てのものは風化していて、 着色、装飾で原型は分からなくなっているだろう。 それでも、中身を確認してみたくなった。 この、ふと涼しい風が身体を撫でていく季節に。 この箱のような、壺のようなものに 私はいつフタをしたのだろう。 どこにしまっていたのだろう。 開け方さえ分からなくて、 開けられなくなってしまっているか

          ここに来た理由