静かなネットカフェ

初めてのネットカフェは、凄く静かだった。
ロングサイズの紙コップに緑茶を入れ、
彼ブースに入る。

私は奥に座る。
帰りの時間を確認すると、
すぐに抱き寄せられる。
無言で、ふぅーと小さく息をつく。

静かだから、耳元でヒソヒソ声で
そのまま仕事のことを話すのを聞く。
「そっかぁ…」
多分、アドバイスを求めているわけじゃない。
吐き出したいのだろうと思って、聴くに徹する。

求めたわけでもなく、彼からキスをしてくる。
いつぶりか分からない、久しぶりの感覚。
気持ちが良いよりも、涙が出そうになる。
時々目を開いて彼を見る。
彼はいつも目を閉じている。
私が目を閉じているときに、
彼が私を見つめていることはあるのだろうか?

下唇を何度も咥えるようなキスをされる。
左の耳を触りながらするのが好きなのね。
時折身体がピクっとする。
カラオケを思い出す。

唇が離れたとき、
私は彼をじっと見つめる。
うるついた、とろんとした目をしているんだろうな、私。
するとまた彼はキスを再開する。
彼は厚みのある、ぷるっとした唇をしている。
それが気持ち良い。

そして、また仕事の話を少しする。
今度は彼が私に覆い被さるような形でキスをしてくる。
体勢を変えるときの「ぎぎぎぎぎ」という、
合皮ソファの音が耳に残った。
やめてよ、ときめいちゃうじゃない。

時間は溶け、店を出る。

帰りのエレベーターでも、
どちらからともなくキスをした。

あーあ…
もう一番美味しい時期は過ぎちゃった、
残念だなあ…。

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