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本の持つ、もう一つの力

 「読書には、自分を相対化する力がある」と何回か書いてきた。


 ただ、今読んでいる本が、本の持つ「もう一つの力」について教えてくれた。

 今読んでいるのは、「プリズン・ブック・クラブ」という本だ。

 内容は、刑務所内で行われた読書会についてのノンフィクション。
 著者は読書会運営のボランティアをしているフリーのライターである。

 参加者は、もちろん囚人。
 昔から本が好きな人もいれば、全然本なんて読まなかったという人もいる。
 そんな彼らが、一つの本を巡って語り合う。
 そこで語られるのは、本を通して向かい合った自分の人生だ。

 ある人は薬物に手を出してしまった。
 ある人は親を殺してしまった。

 そういった罪を背負った自分の人生を本を通じて話す。

 それは、本を読むという行為が、自分の経験や知識と向き合い直す行為だからだ。
 自分の経験や知識が、新たな本によって改変される。
 それが、本の持つ「自己を相対化する力」だ。

 ただ、今回はもう一歩先に進む。

 「本の持つ、もう一つの力」、それは「人と人をつなげる力」だ。

 読書会メンバーは、本に書かれた物語と自分の人生を比較して話す。
 それは「あなたはどんな人ですか?」と直接問われるよりも、ずっと語りやすいだろう。
 それを聞いた別の誰かも、自分の人生を考える。
 それは「同じ本を読んだ」という共通体験があるから、ずっと分かりやすいだろう。

 本の前には、「その本を読んだ人」と「まだ読んでいない人」しかいない
 その稀有な平等性によって、そして読書が自分と向き合う行為であるということによって、
 本には人と人をつなげる力がある。

 この力については、もっともっと可能性があるように思えた。
 例えば、映画や音楽とは違うのか。
 たくさんの人がもっと本を読んでくれるきっかけになるのか。
 色々考えたいテーマのきっかけになった。

 最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

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