ななしうま

うまなりに、思っていること。文章を読んだり、書いたり。写真を見たり、撮ったり。

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最近の記事

TERRADA ART AWARD 2023 感想

 寺田倉庫が主催している『TERRADA ART AWARD 2023 ファイナリスト展』を訪問した。  11時の開場ともに入場したが、他にも5名ほど開場待ちの人がいて、関心度の高さを感じた。  ファイナリストになった、新進気鋭の現代アーティスト5名によるインスタレーションが展示されており、入場無料のため、現代アートに親しみのない人でも気軽に入ることができる。同じく寺田倉庫で開催されている『ゴッホ・アライブ』の前後でも、ぜひ訪れてみてほしい。  展示内容で特に印象に残った

    • 本の持つ、もう一つの力

       「読書には、自分を相対化する力がある」と何回か書いてきた。  ただ、今読んでいる本が、本の持つ「もう一つの力」について教えてくれた。  今読んでいるのは、「プリズン・ブック・クラブ」という本だ。  内容は、刑務所内で行われた読書会についてのノンフィクション。  著者は読書会運営のボランティアをしているフリーのライターである。  参加者は、もちろん囚人。  昔から本が好きな人もいれば、全然本なんて読まなかったという人もいる。  そんな彼らが、一つの本を巡って語り合う。

      • 平成最後の8月15日、あるいは一つの今日

         また、この日がやってきた。  日本人にとって、8月15日は特別な日だ。  今日が何の日か、分からない人も増えているらしい。  それでも、今日という日は、日本という国が大きく変わった日だ。  正直、21世紀少年の僕には、「日本国」とか言われてもよく分からない。  ワールドカップを見れば日本戦には力が入るし、日本人がパルムドールを取れば拳を握りしめる。  でも、「国のため」とか、今のオリンピックの騒動を見ていると敬遠してしまう。  国から人へ。全体主義から個人主義へ。そんな

        • その写真を見るときは

          写真を見るとき、僕はなにを見ているんだろう? そこに写されたものだろうか。 写されたものとして実際に存在した瞬間だろうか。 写された瞬間を含んだ物語だろうか。 多分、写真論みたいなものを読めばこういったことも書いてあるんだろう。僕は寡聞にして知らないので、自己流であれこれ考えている。 創作物を味わうとき、最初は作者の意図に引っ張られる。 作者はプロで、僕たちの五感を操る手法をたくさん知っている。 きっと、最初に目につくのは、彼らが意図した何かだろう。 それを離れるため

        TERRADA ART AWARD 2023 感想

          それは、誰に向けての言葉なんだろう?

           仲の良い後輩とランチをした。   彼とはもう5年位の付きあいで、たまに一緒に食事をして、近況報告をし合っている。  出身地や環境も全く違うのに、なんとなく人生の価値観が似ていて、話していてとても楽しい。  そんな彼が、一つ決断をした。  具体的なことは書かないけれど、どうにも今までの彼の考えからは出てこないような決断だった。  詳しく話を聞いても、やっぱりピンとこない。 「ほんとに、それでいいの?」と僕は尋ねた。    彼はあれこれ理由を言っていたけど、掘り下げてみたら

          それは、誰に向けての言葉なんだろう?

          新しく純粋なコトづくりの時代へ

           体調が悪くてベッドで寝転がっていたら、ふと「コトづくり」という言葉が浮かんできた。  なんとなく、しっくりくるワードだ。ちょっと考えてみよう。  最近の若者は「モノからコトへ」と価値観が変化していると、よく言われる。  僕自身も、若者当事者として、コト重視な感覚もある。  それはもちろん、ある程度のモノが簡単に揃うことが前提になっている。  その状態を達成してくれた先達の方々には感謝しつつ、やはりコトがほしい。  多分、コトはモノに比べて、持続性と固有性が強いのだ。  

          新しく純粋なコトづくりの時代へ

          「憧れ」を合わせて「新しい」をつくる

           最近の僕は、よく、ロールモデルになるような人を探している。  自分が何をしたいのかがしっかり固まっていないから、「この人のやっていること、面白そうだな。僕もこんなことをやってみたい」というように、ぼんやりとした憧れを抱いてしまう。  ただ、全く同じことをやるのなら、意味がないようにも思う。  色々な苦労や経験をしてきた先達の方々のほうが、僕よりもずっと上手くやるだろう。  だとすると、僕は何をすべきなんだろう? 何をしたいんだろう?  一つ思いつくのは、二人以上のロ

          「憧れ」を合わせて「新しい」をつくる

          作家の、目と、あたまと、手

           作家の能力というのは、なんなのだろう?  今思っているのは、作家には、優れた「目」「あたま」「手」が必要だということだ。  作家の「目」というのは、「社会や世界をどのような視点で、どこまで深く見つめ、どんなことに気づくか」ということだ。  例えば、川上未映子「ヘブン」や今村夏子「こちらあみ子」は、驚くほどに子供の視点で描かれている。僕たちはこれらの作品を見ると、「ああ、あの頃は世界がこんな風に見えていたなぁ」と懐かしかったり、古傷を思い出したりすることができる。これらは

          作家の、目と、あたまと、手

          イヤフォンなしで歩く

          外出するとき、僕はいつもイヤフォンで音楽を聴きながら歩く。 街の雰囲気と合う音楽がかかると、自然と足取りも軽くなる。 まるで映画の中にいるような、そんな気分だ。 しかし先日、イヤフォンの充電を忘れ、仕方なしに音楽抜きで散歩することになった。 「ちゃんと充電しとけば良かったなぁ…」なんて後悔していた。 でも、ふと耳を澄ますと、そこには無数の音があふれていた。 学生のはしゃいだ声。 車のエンジン音。 風が通り抜けるざわめき。 「あれ?世界ってこんなに音にあふれてたっけ?

          イヤフォンなしで歩く

          失敗すること、立ち直ること

           最近、自分にとっては人生最大の失敗をした。  それなりに準備をして本番に向かったのだけれど、完全な失敗だった。    失敗した直後は、全身から力が抜けて、部屋のベッドで何時間も天井を見上げていた。  頭は変に冷静で、「なんで失敗したんだろう?」とあれこれ原因を探っていた。  ただ、論理的な思考は何もできなかった。ぐるぐると「なんで?」という言葉だけが巡っていた。  なんとかご飯を食べ、風呂に入り、歯を磨いて、ベッドに入った。  すると、これからどうなるんだろうという猛烈な不

          失敗すること、立ち直ること

          Every child is wonder!

          先日、映画"wonder"を観てきた。 とても素晴らしい作品だと感じたし、多くの人に観てほしいと思った。 映画の内容についてはなるべく触れずに、この映画を観て感じたことを書いていきたい。 主人公オギーは、特別な顔を持った男の子だ。 もちろん(というのが悲しいけれど)、通い始めた学校で、彼はいじめに遭う。 ただ、それをしているのは数人のグループのみで、ほとんどの子供たちは、オギーを遠巻きに見ている(あるいは、見ないようにしている)だけだ。 お姫様気質の女の子は、初めから自

          Every child is wonder!

          雨が止んだら、皆で虹を見よう。

          BUMP OF CHIECKEN「虹を待つ人」の歌詞を解釈してみたいと思う。 小さい頃からBUMP OF CHICKENが好きだった。 もちろん歌声も曲も好きなのだけれど、とりわけバンプの詞が好きだった。 バンプの詞には、世の中にある悲しみや痛みを受け止めながら、それを乗り越えようとする強さと優しさがあると思う。 例えば、 「消えない悲しみがあるなら 生きつづける意味だってあるだろう」(HAPPY) 「気づくのが遅くてうなだれた僕の目が捕えたのは 水たまりの中の小さな

          雨が止んだら、皆で虹を見よう。

          「センスが良い」ってなんだろう?

           センスが良いとはどういうことだろうか。服装が斬新であったり、音楽的才能に恵まれていたり、そういった人たちをセンスが良いと呼ぶことが多い。一方で、文化や芸術に限らず、思考一般についてセンスが良いとされる人もいる。彼らはなぜセンスが良いと言われるのだろうか。  センスが悪いという言葉もある。センスが悪いとは、本来センスが良いものとされている事に対して感度が低いことを指す。もしくは「センスが良いものではないもの」を強く推していることを指す。言葉遊びになっているけど、実はそもそも

          「センスが良い」ってなんだろう?

          物語を、自分に溶け込ませること

           物語を味わうときに心がけていることがある。  それは、そのキャラクターや舞台の価値観を、なるべくそのまま自分の中に取り込むことだ。  それによって、現実世界の自分の持っている価値観から抜け出すことができる。つまり、自分の価値観を相対化することができるのだ。  本を読むと、共感力が上がるといわれている。この世界にはたくさんの人々がいて、その誰しもが自分とは違う価値観や歴史観で生きているということが理解できるからだ。物語を味わうことによって、僕たちは現実では決してあり得ないこ

          物語を、自分に溶け込ませること

          白樺派と、「きれいごと」の物語

             後輩の女の子から、おすすめの小説を聞かれたことがあった。その子は国文科で、近代日本の小説が良いと言われたから、白樺派をおすすめしようと思い、武者小路実篤の「真理先生」を推した。 白樺派「大正デモクラシーなど自由主義の空気を背景に人間の生命を高らかに謳い、理想主義・人道主義・個人主義的な作品を制作した。人間肯定を指向し、自然主義にかわって1910年代の文学の中心となった。1910年(明治43年)刊行の雑誌『白樺』を中心として活動した。」  白樺派はぼくの読書

          白樺派と、「きれいごと」の物語

          世界は、あなたの言葉でできている

           ぼくたちの周りには言葉があふれている。  それは、コンビニのレジで言う「ありがとうございました」だったり。退社する時の「お疲れ様です」だったり。  もちろん、辛い言葉や、悲しい言葉だってあふれている。  昔言われたひどい言葉に、今でも胸を痛めたりもする。  最近になって、そういう時の対処法を思いついたから、話してみたい。  すごく簡単に言ってしまえば、「ポジティブな言葉に置きかえる」ということだ。  「なんだ、そんなことか」と思ったかもしれない。でも、ちょっとし

          世界は、あなたの言葉でできている