映画「君の膵臓をたべたい』と『君の名は。」に共通する成功法則は、死→再生→復活だった。
少女の「死」を知った少年がなんとか助けようと奮闘する物語
「泣ける小説」の実写映画化である『君の膵臓をたべたい』がTV放映されました。(浜辺美波の健気な演技に心打たれます!)
最近大ヒットしたり話題となった映画には多くの共通点があるのはご存知でしょうか?
*ネタバレがありますので、ご了解ください。
例えば、新海誠監督の『君の名は。』との共通点について、
どちらも少女の「死」を偶然知ってしまった少年がなんとか助けようと奮闘努力する物語であることです。
言われてみれば、つまらないことですが、実はこれは物語作りの王道パターンなのです。
まず、物語には「欠けているものを満たす」という鉄板の法則が存在します。
主人公である少女は、死ぬ運命を背負って登場します。つまり、命が欠けている状況が最初に設定されているわけです。
さらにもう1人の主人公である少年との関係性は、見知らぬ者同士である状態から、ある出来事をキッカケにして急速に相手を意識し始めます。
少女の命にタイムリミット(欠けている)があるからこそ、少年はそれをなんとかしたい(満たしたい)と懸命に行動をおこすのです。
そして、物語の中では、恋人同士になる直前で終わっているのも、2つの物語で共通しています。なんとなく淡い青春ドラマの要素があるも世代を超えた魅了なのでしょう。
死の葛藤、再生の試練、復活の願望
物語の展開は、少年が少女の「死」の運命を偶然知ってしまうところから、「死」に対して無関心だった少年の死に対する葛藤が始まります。
対照的に少女は自らの「死」に対して恐怖心や深刻さがありません。
そのあと、少女の「死」を知った少年は、なんとかして少女を助けたいという気持ちが湧き上がり、再生への試練が始まります。
『君の名は。』では再生への試練が結果的に報われることで、少女は新しい命を手にすることできました。しかし「君の膵臓をたべたい」では再生への試練は報われることなく、あっけない結末を迎えることになりました。
どちらも物語のクライマックスに相応しい、観客の情感を揺りうごかす部分です。
物語のエンディングでは、主人公たちは復活の願望を叶えることになります。
「君の名は。」お互いに名前も顔も記憶にない状況で、8年後に少年と少女は赤い糸の絆をたぐり寄せて再会することができました。
「君の膵臓をたべたい」では、身体的にはすでに少女は存在しませんが、大人となった少年が偶然「遺書」を発見することで、少女は精神的な復活を果たし少年の心の中でずっと生き続けていくことができたのです。
タイトルの謎解き、ビフォアとアフターのギャップ
タイトルのつけ方には、作者の意図が詰まっていると言われています。
「君の膵臓をたべたい」「君の名は。」どちらのタイトルも、最初聞いただけではどんな物語かさっぱり分かりません。
特に、「君の膵臓をたべたい」はホラー物語と勘違いされるかもしれません。『君の名は。」も昭和映画のリメイク版と思われたかもしれません。
しかし、物語の結末でこのタイトルの謎解きが終わり、本当の真意が明らかにされると、観客は納得しそのタイトル名を心深く刻むことになるのです。
映画を観るビフォアとアフターで、タイトルの意味に変化を与えるギャップこそが感動の仕掛けとなっているのです。
「君の膵臓をたべたい」のログライン、ヒーローズマップ、感情曲線(シンデレラ曲線)を添付しますので、映画鑑賞の参考にご活用ください。
〜もう会えないあの時のキミへ〜
”膵臓”とは何だったのでしょうか?
まず、最初に思うことは、生きていくために大切だけど、
普段は気付かないふりをしている傷つきやすい「本当の自分」と言えるかもしれません。
もし「本当の自分」に気づいてくれる人が現れたら、
「本当の自分」に対して共感してくれて、少しでも一緒の時間を過ごしたいことを思います。
桜の花は散ってしまう運命です。しかし、桜の樹は花が散った後も生き続け、
来春の開花の準備をしています。
桜の花と樹は単独では存在できない、命の絆で結ばれている関係なのです。
主人公の名前が「桜良」と「春樹」だったのは偶然ではありません。
”膵臓”という魂の絆によって、来世で2人は再び出会うことを暗示した名付けだったのだと思います。
物語の結末は死という別れではなく、再会への始まりだったのではないでしょうか?
「君の膵臓をだべたい」、それぞれ相手へのラストメッセージには、こんな想いが秘められていると感じられます。
もう会えないあの時のキミへ、いつかどこかでふたたび会いたい!
そしてもちろん、『君の名は。』の「三葉」と「瀧」の深い思いとも重なります。
『君の膵臓をたべたい』と『君の名は。』どちらの映画も「死」を扱っていますが、生きる勇気や希望も同時に与えてくれることも、大ヒットの要因ではないでしょうか?
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