「兼業小説家志望」(仮題) 9コラボ小説
前回のおはなし
「これで、いいのだろうか」
亀井は、真理子から言われた通り、「悪しからず」の小説を書き上げた。
国家機密の情報が隠されている「悪しからず」を、潰される前に日本国民全員に知ってもらわないといけない。
そのためには、炎上も止む無しである。そうしなければ、こちら側がやられてしまう。スピード勝負となってしまった。
「亀井さん、これで悪しからずの小説は最後まで書き切ったんですね」
早川は、亀井から渡された悪しからずの最後の冒頭を読んで、ちらっと亀井を見た。
亀井は、決意ある眼差しで早川を見返した。
「この内容を世に出してしまうと、日本の中枢から人がいなくなるかもしれませんね」
早川は、くすっと笑った。ただ、その目は一切笑っていなかった。
「吉井と恵理子さんを助けるためには、これしか方法が無いと思う。このままでは全員、闇に消されてしまうから」
亀井は毅然とした態度で、言った。
「それにしても、真理子さんと話をしてから1日あまりで、よく書き上げましたね」
早川は原稿を鞄に大事にしまった。
「間に合わなかったら、大変なことになりますからね。いつも締切りギリギリになるので。今回も明日までには、小説を投稿しないといけませんからね」
亀井はやり切った感じで、椅子の背もたれに体を沈めた。
「では、原稿をお預かりしました。私も一刻も早く、この事実…いえ、小説でしたね、をあらゆるところに持っていきたいと思います。時間は、明日中いっぱいですね」
早川はにこっと笑って、席を立ち喫茶店を出た。亀井は、後ろ姿を見送って、深く安堵した。
「さて、これからどうするかな」
亀井としては、小説を早川に渡したので、もうこれ以上やれることはないと思っていたが、果たしてそうだろうか。
小説を書き上げることに必死だったので、考えていなかったが、もし早川があちら側の人間だとすれば…
渡邊の部下というだけで、信用してもいいのだろうか。そう、亀井の心の水面に小石を投げ込んでしまった。
その一粒の小石が、グルグルと渦巻を作り始めた。
亀井は、考えた。
この小説を握りつぶそうとしている輩がいることは分かっている。そして、なぜか身近な奴が、あちら側の人間のような気がするのだ。
誰があちら側の人間なのか。早く結論付けた方がいい。でないと、そいつに握りつぶされてしまう。
亀井は、「〇〇」があちら側の人間だと考えた。
会社の同僚 吉井
同僚の彼女 恵理子
スナックのママ 真理子
現代討論社 早川
言葉の魔術師 歩行者b
あちら側の人間だと思われる方の名前をクリックしてください。
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