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3月17日みんなで考えるSDGsの日

「大きくなったら、お花屋さんとケーキ屋さんと警察官になって、あとは、テレビに出てダンスする!」

 まもなく小学一年生になる娘、尚が元気いっぱいに言う。私は、全部叶うといいねと返事をしたものの、時刻は22時で、出来ればその元気を寝かせていただきたいのだった。


 彼女が寝たあと、同じ布団の中で考える。

 尚の目には、輝かしい未来が映っているのだ。その結果など、何年も先にならなくては分からないけれど、彼女の希望を叶えるために必要なのは、なんにでもなれる未来とそれを許容する世界。

 では私に、一体何が出来るだろうか。

「あれ、まだ起きてるの?」

 夫が寝室の扉を開けて小さな声で言う。私は手招きをし、尚の隣に彼を呼んだ。

「尚ね、将来なりたいものがたくさんあるみたい」

 私が言うと、彼は尚の頭を優しく撫でながら微笑む。

「そうなんだね。きっと今が幸せなんだろうな」

 今が幸せ?

「幸せな未来を望んでいるとかではなく今が幸せなの?」

 私が聞くと、彼は今度は私に笑いかける。

「だって、今が幸せで、それが続くと思えるから描く未来も幸せなんじゃないかな」

「尚は、ちゃんともう幸せでいてくれてるのかな」

 私が不安げに聞くと、彼は私の頭を撫でる。

「君や僕が幸せに育てているからね。だから、僕らは尚にとっての幸せが持続するように生きていくんだよ。それが使命」

 と、勝手に思っているんだ。そう言って彼は照れくさそうに笑った。

「持続するようにってどうしたらいいの?」

 彼は私の頭を撫でていた手を止め、今度は自分の頭を軽く掻き考える素振りを見せる。

「そうだなぁ。今僕たちが幸せだなと思っている当たり前のことが続くようにする。」

「例えば?」

「ご飯が美味しく食べられること、勉強が出来ること、綺麗な水が飲めること、安心して暮らせること」

 夫が並べたそれらは確かに今の私達にとっては当たり前のことで、当たり前すぎて正直意識なぞしていないのだった。

 むにゃむにゃと寝言のように尚が言いながら寝返りをうった。今度は夫の方に顔が向いている。彼は頬をツンツンと指で優しくつついた。

「環境を守る、公平な世の中にする。それはうちの家だけの話じゃなくて、住んでいる都道府県だけでも、日本だけでもなくて、世界がそうなることが重要なんだよ。もうすごい広大な話だよね」

「うん、何からどうすればいいのやら」

「ゴミを増やさないとかむやみにプラスチックを増やさないとか。自分にできることは小さな1つだけどそれを続けて行くことが今の世界がこの先も続くことに繋がるんだと思うよ」

 夫の目は、その先に映る娘の幸せを見ていた。娘が世界のどこにいても幸せに生きられるようにと考えると、確かにこの家だけの話ではなくなる。世界中が続く幸せに満ちればきっと、それは大切な我が子のためになる。

 結構大げさな話なのに、やれることは米粒大である。でもそれを全人口が行えば、それはきっと持続可能な世界となる。

 この子のためだけでもいい。たった一人のための行動が広がれば、それは世界になる。

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【今日の記念日】

3月17日 みんなで考えるSDGsの日

総合PR会社である共同ピーアール株式会社の総合研究所(PR総研)が制定。国連が定めた持続可能な開発目標であるSDGs(Sustainable Development Goals)についてのさまざまな企業の取り組みをより多くの人に伝えることが目的。また企業だけでなくひとり一人がSDGsについて考える日にとの思いも込められている。日付はSDGsに持続可能な世界を実現するために掲げられている17のゴールから「みんな(3)」で「17」のゴールを実現しようという意気込みで3月17日に。


記念日の出典
一般社団法人 日本記念日協会(にほんきねんびきょうかい)
https://www.kinenbi.gr.jp の許可を得て使用しています。

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