“自分の思想から行動までを一本の線にするために正直でありたいし、全部見せても恥ずかしくない自分でいる努力もしていたい”
16. 一ノ瀬メイ / パラスイマー・アクティビスト
パラスイマーであり、アクティビストでもある一ノ瀬メイちゃん。
「生きてるものみんなに価値がある」という信念が根底にある彼女は、アスリートとしてだけでなく、気候変動やヴィーガニズムについてなど、多岐に渡る分野で力強い発信と取り組みをしています。
清々しいまでに筋の通った生き方をしているメイちゃんの思想をお話しいただきました。
■一ノ瀬メイ (イチノセ メイ)
パラスイマー・アクティビスト。
先天性の右前腕欠損。2010年アジアパラ競技大会に史上最年少13歳で出場し50m自由形(S9)で銀メダル。7つの日本記録を持つ。リオ2016パラリンピックでは6種目に日本代表として出場。
高校生の時に、全英連のスピーチコンテストで「障害は社会が作っているものだ」という強いメッセージで全国優勝を果たす。
以降、障害者差別に関してのみならず、種差別や気候変動などの観点から、あらゆる不公平さに関して声を上げ、取り組みを行なっている。
Instagram: @mei_ichinose
Twitter: @mei_ichinose
_今の仕事を始めたきっかけは?
水泳は一歳半から習い始めて、物心ついた時から泳ぐのは当たり前やった。
9歳の時に初めてパラリンピックを知って、競泳のコースに入るために申し込みに行ったら「障害者の方は入れないです」って断られて。それまで右腕が短いことに不自由を感じたことはなかったんだけど、その時に「障害者」っていうレッテルを貼られたことが、社会が「障害」を作っていることを認知するきっかけになった。
自分と同い年の子たちより早く泳げたのに、腕が短いってだけで断られたのは悲しかったというよりも悔しかったし…「なんでやねん」っていう怒りが自分を突き動かしていたと思う。
_仕事をやり続ける原動力は?
でも今は怒りより、小さなことで成功体験を積み重ねてきたことが力になってる。
例えば、自分の後輩で同じくパラスイマーの子がスイミングの申し込みに行って、なんの不自由もなく入れたのは、そのコーチが私のことを知ってくれていたからとか、みんなの中でパラリンピックが認知される理由のひとつになれたこととか。
最初は「自分が水泳で活躍して、現状を変えてやる!」っていう怒りがベースだったけど、実際に自分が行動して周りに与えるインパクトを実体験として感じてこれたのは他の活動でも活きてるなぁって感じてる。
1人から社会は変わっていくって信じてることも原動力のひとつかな。
気候変動とかヴィーガンのことで講演させてもらうと、「1人が変わっても、意味なんてなくないですか?」って絶対に聞かれるの。
でも、私は1歩目があるから2歩目があって、2歩目があるから3歩目があるし…まず1歩を踏み出さないと、100歩目なんて絶対にないやんか?
1人が変わることの価値と影響力をいつも信じてることは力になってるのかもしれん。
_自信を無くしたときはどうやって自分を軌道に乗せ直しますか?
ゼロに戻ることを意識する。
「マイナスはネガティブ思考だけど、ゼロはポジティブ思考に入るから、とりあえずゼロに持っていけばいいんだよ」って大学のスポーツ心理学の先生が言っていて。
確かに、マイナスからプラスに持って行かなあかんと思うとしんどいけど、ゼロに戻すだけならもっと簡単にできるな〜って。
だから、落ち込むことがあったら、そこから何を学んだか、何に活かせるかを見返して、次のスタート地点に持っていけるように考える。
_仕事を始めた際に影響を受けたアドバイスや言葉はありますか?
いっぱいあるんだけど、1番は「違いはチャンス」っていう、母親がちっちゃい時から言ってくれてたこの言葉かな。それは今も自分の軸になっている。
「何かで10分の1の人間で、他の何かでも10分の1の人間になれたなら、それは掛け算になるから100分の1の人間になる。
人より腕も短いし、ハーフであることも人と違う点やけど、それは隠すことではなくてチャンスなんだ」って。
マミーがそう言い続けてくれたから、私は腕がなくてラッキーってずっと思ってきたし、いろんなことに挑戦できるんだと思う。
_憧れや尊敬している人、あるいはロールモデルにしている人はいますか?
この人っていうのはないのかもしれない。
いろんな人と話をする中で、いいなって思うところを吸収させてもらってるから…
ある意味みんなが私のロールモデルかな!
_あなたにとって仕事とは?
与え、与えられるもの。循環するものかな。
何かを人に与えることができて、そのリターンで何かを与えてもらうことが仕事だと思ってる。
_ 働く中で、あるいは生きてる中で大切にしているキーワードを教えてください
正直さ。
ガンディーの「幸福とは、あなたが考えること、あなたが言うこと、あなたがすることの調和がとれている状態のことだ」っていう言葉がすごい好きで、そうあるためには正直さがすごい大事だなって思ってる。
正直であるから言葉はまっすぐ人に届くと思うし、何より自分自身が心地いいなって。
それに、本当の自分を正直に出していけばいくほど、自分にとって必要な人を引き寄せられると思ってる。逆に思ってないことをいったり見せたりしていると、その偽りの自分で人を引き寄せちゃう。
だから自分の思想から行動までを一本の線にするために正直でありたいし、全部見せても恥ずかしくない自分でいる努力もしていたい。
サポートくださりありがとうございます!ご支援いただいたことを糧にこれから制作をがんばります。