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実写版「リトル・マーメイド」を観た感想を3つのポイントで紹介する
ディズニーの実写化の波が続く中で、昨年満を持して予告編が発表された「リトル・マーメイド」。これまでどの実写化映画も観ていなかったのだが、小さい頃アリエルが好きだったことや海が好きなこともあり、これだけは絶対に映画館に観に行きたい!と心待ちにしていた。
というわけで、先日、水色のワンピースを着てルンルン気分で観てきた。ポップコーンの匂いが香ばしい映画館で周りを見回すと、私のように女友達と複数人で連れ立って来ている人が多く、土曜日の映画館は色とりどりの服を着てわくわくした顔をした女性でいっぱいだった。
さて、今回の映画が公開される前の話題は、もっぱら黒人のハリー・ベイリーのアリエル役への起用でもちきりだったように思う。元々白人として描かれたアリエルを黒人の女優が演じることをめぐっては様々な意見が飛び交い、大変話題になった。でも実際に蓋を開けてみたら、彼女のパフォーマンスは完璧で文句ひとつ言うポイントがなく、むしろ映画の他の部分へ疑問を呈するレビューが多かったように思う。
私も同意なので、考えたことを書いていきたい。(ネタバレ含みます)
アリエルとして完璧なキャスティング
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今回の映画を支え、ディズニーらしさで満たし、圧倒的な歌声で率いたのはなんといってもハリー・ベイリーのアリエルだったと思う。彼女の可愛らしいこと!そして歌声の美しいこと!
彼女のくるくる変わる表情や体を使った演技は愛くるしく、ディズニープリンセスを人間にしたらこんな感じだろう、というイメージを見事に表現していた。意思が強くてでもおちゃめなところとか、アースラに人間になる契約にサインするよう迫られて迷うところとか、エリックに恋するシーンとか、細かい演技に見惚れてしまった。
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実際の彼女も、インタビューを見ている感じイノセントで可愛らしく、チャーミングな印象で、なかなかここまでディズニープリンセス役にぴったりな人はいないだろうと思うくらいの素晴らしい人選だと思った。
元々有名な人がやるより、他にイメージのついていないまっさらな存在で、人々が自由にプリンセスの理想を投影できるような人がやっぱりディズニープリンセスにはいいんだろうな、と思ったが、ハリー・ベイリーはそれを地でいく感じだった。
(ライブパフォーマンスで素晴らしい歌声を披露するハリー・ベイリー)
歌声も可憐でかつパワフルで、「男を惑わす魔力を持った歌声」というファンタジーの設定がしっくりきてしまうくらい、そのままの声がアリエルとしての説得力があった。
黒人のアリエルだからということでハードルが上がり、すごいプレッシャーもあっただろうに、それを圧倒的なパフォーマンスではねのけて有無を言わせなかったのは素晴らしいと思うし、メディア各紙のレビューを見ていても彼女のパフォーマンスを手放しで賞賛する声ばかりだった。
その完璧さには、少し、オバマ大統領の時に話題に上がった「ほんの少しでも完璧でない部分があると、黒人だからだ、人種を盾に起用されたからだ、ほら見ろ、といって批判される。絶対にいつでも完璧でいなければならない」という世間の現状を感じることもある。たった一人の個人が人種全体のイメージを背負わされてしまうのは、アメリカにおけるマイノリティの悲しい現状であり、でもそれを踏まえた上で絶対に失敗してはならないプレッシャーを背負い、見事に演じ切った彼女はすごいと思う。
現代のリトル・マーメイドとして作り込まれたストーリー
今回の実写化にあたり、ストーリーも原作からアップデートされていた。原作ではざっくりとしていた「なぜアリエルがエリックにそこまで惚れ込むのか」「なぜトリトンが陸の世界をそこまで憎んでいて、あれほどアリエルに厳しいのか」「陸の世界の時代設定や様子」みたいなところが丁寧に作り込まれている。
特に、アリエルがエリックに恋をするシーンは、見ていてきゅんとした。船上のパーティーをこっそり水面まで見にきて、エリックと執事の会話を盗み聞きするアリエルは、エリックも王子という立場でありながら海の世界に焦がれ、自らの目で新しい世界を見たいと思っていることを知る。そのエリックの話を聞くアリエルの表情のなんと可愛らしいこと!
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実写版ではその後、原作になかった部分を付け足し、アリエルとエリックが仲を深めていく様子も描かれている。海の底の洞窟に人間界の小物を集めていたアリエル同様、実はエリックも海の珍しいものを集めた小部屋を持っていて、そこでアリエルはエリックに法螺貝の吹き方や海の岩に隠れた秘密を見せてあげたりする。ささやかな交流を通じ、二人は言葉を介さずとも相手が自分を理解してくれる!と感じて恋が芽生える。こういう部分は、やっぱり原作の「ハンサムだから好き」「可愛いから惚れた」とは違う納得感があり、現代版の映画として蘇らせた意義があったと思う。
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エリックの内面描写はかなり原作より膨らませて描いてあって、陸の世界の描写も原作より長い。お城の麓の村でみんなでダンスするシーンとかは、海の世界で泳ぐのも楽しいけど陸の世界のダンスも楽しいよね、と両方の世界の良さを印象づける役割を果たしている。また船の沈没が多発していることから人間が海に怯えている様子もさらっと盛り込まれており、凶暴な人間を嫌う人魚の世界と海の世界の怒りに怯える人間の姿から二つの世界の断絶が描き出され、その分エリックとアリエルの恋が二つの世界の架け橋のような意味を持つ。
最後のシーンでは両者の世界の融和が描かれ、新たな船出に向かう二人を人魚と人間が共に祝福するシーンがクライマックスとして設定されている。恋の成就ではなく、二つの世界の融和がエンディングであるところは、平和とか希望を描くディズニーっぽいところだと思う。
ストーリーとそれを支える映像のミスマッチ
というわけでアリエルやストーリーはとても素敵だったのだが、全体的に見ていて違和感があったのは、映像の部分だったように思う。個人的には、アップデートしたストーリーやキャストの演技の魅力に、CGIで作りました!感のある背景映像が追いついていないように感じた。
なんというか、映像の華やかさがちょっと物足りない感じがしたのだ。いや、豪華なんだけど!なんていうんだろう!「Tiktokでめちゃくちゃ切り抜かれる」感じの、「インスタで映える」感じの、豪華絢爛でファンタジーの世界そのままみたいな映像が多分私たちは見たかったんじゃないかという気がするんだけど、最新CGI技術の限界なのかアニメを忠実に再現することが最優先されたのか、アンダー・ザ・シーもキス・ザ・ガールも、全部なんというか「うーん、綺麗に収まっている感じ」という印象で、「なんじゃこりゃ!ファンタジーの世界そのままだ!うわー!すごいー!」みたいな、圧倒される華々しさがなかったように感じた。アメリカのメディアでは「遊び心が足りない」というレビューもあったけれど、まさにその通りだと思う。
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原作のアニメが全体として統一感があり、力強さにみなぎっていたのは、多分、原作のシンプルなストーリーにアニメの躍動感がマッチしていたからで、それを実写化しストーリーを作り込んでリアリスティックにした上で映画にするなら、そこに背景の華々しさをどうしても観客としては求めてしまう。
その点、今回の映画はアニメをできるだけ綺麗に実写にしました、という感じだったため、映画が終わってふっと映画館が明るくなった後の余韻や感動がちょっと薄く、観客席の雰囲気も「うん、すごかったねー」という淡々とした感じだった気がした。個人的な感想だけど。
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アリエルの相棒たちであるカモメのスカットルや魚のフランダーといった魅力的な脇役も、役者さんのパフォーマンスは面白いしグッとくるものがあるし歌声も素敵なんだけど、どうも実写化した際の「え?フランダー平べったすぎじゃない?」「セバスチャン、蟹だったの!?」みたいな違和感が先に来てしまって、パフォーマンスがいまいち活かしきれていなかったように思う。
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多分脇役の中で一番イメージにしっくりきたのはアースラで、それは多分、魚とか鳥とかと違って顔の部分が人間だからだと思うんだけど、演技も相まって迫力があってすごかった。でもそれも、現在の映像技術がこういう「迫り来るタコの怖さ」とか「海で巨大化する人間」を表現するには長けているからで(「パイレーツオブカリビアン」を思い出した)、まだ動物の動きとか表情だと難しいのかな、とか、映画自体というよりは技術の進歩度合いが完成度に出てしまったのかな、と考えたりした。
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まとめ
こう、なんというか、全体的には面白かったし、ところどころ圧倒されるような素晴らしい部分(主にアリエルの歌声)もあったんだけど、見終わった感想として「全体的なwow!感がちょっと足りないかも」という感じになってしまったのは、ちょっと残念だった。
でも!でもでも、元々アリエルが一番ディズニープリンセスの中で好きだった私としては、海の世界と人魚を実写で見れただけで結構満足だったし、美しい歌声が聞けたし、新時代のディズニープリンセスが見れたので、よかった。というわけで、全体としては星2~3ですが、リトル・マーメイド好きにはアリエルの歌声を聞くだけでもおすすめです。
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