植村美有

ピアニスト 脚本演出家 ゆるい

植村美有

ピアニスト 脚本演出家 ゆるい

最近の記事

かなしいことはいつもある

と、かつて中島みゆきが歌っていた。 そこには理由がない。 青森から帰って、早々シュガーシャックに逃げ込んだ。 理由が分からないんだ、とみんな言う。 私も分からないので、黙るよりない。 雪のない都会は、いつもきちんと深淵の中にいる。 かつて、理由のないことはたくさんあった。 幼かったからかもしれず、時代かもしれず、もっともっと単純な頃があった。 それがいつのまにやら若さをとっくに越えて、理由がなくては動いてはいけなくなった。 私はずっと変わることができず、まわりの美しい成

    • “在ること”が出来なくなったこと。

      もしかしてだけど、もしかしてだけど(どぶろっく懐かしいな)、ほんとは淋しいとか哀しいとかじゃなくて、“ただそこに在れない”だけなのかもなぁと思ったりしました。ただそこに在ることが、死ぬほど難しい今。昨今。 指を故障して、ピアノが思うように弾けなくなってから。いや、それより前から。 創作してくれ、アーティストだろ、と大好きなダンサーに肩を揺さぶられて、疲れたと呟いてから。 ハインラインの夏への扉の最初のシーンを覚えている人、いるのかな。冬になると猫のピートが家中の扉をあけてく

      • 号泣する準備はできていたが、結局しない。

        江國香織の『号泣する準備はできていた』を読んだ。 今更…?と思う方もいらっしゃるかもしれないが、私はこれまであまり江國香織を読んだことがなく、唯一読んだのは冷静と情熱のあいだで、しかも辻パートの方が好きだった。 2023年秋頃はいろんなことが重なって、号泣する準備は万端ではあるがそのキッカケがない、というような状態が続いていた。 そんな折によく思い出していたのがこの本のタイトルで、満を持して読んでみた、というところである。 そして結局、読んだ内容は男女の話なんだけれども

        • あまりに絶対的に自殺であった

          読んだ。 お分かりの方もいるかと思うが、雨宮まみの「40歳がくる‼︎」である。 雨宮まみさんというライターのことを私は知らず、ある日パラパラとこの新刊を書店でめくったことが出会いなのだが、自分が39歳を迎える直前であったためタイムリーであったこと、ぱらりと読んだだけでも分かる独特な言い回しの文章と、引っかかるところがいくつもあった。 その時は急いでいたのもあって買いはしなかったのだが、帰宅後に調べて、40歳で亡くなっていたのを知った。 この本(連載)を書いてから、一年以内に

        かなしいことはいつもある

          違う映画にさっさと移れ

          人生ってちゃんと問題を解決するとくるくると巡って廻っていく。逆に解決しない限り、淀み続ける。結局、同じ場所で淀み続けてる人って、一つ一つを解決していない。 何かを解決することって、それが仕事だろうが病気だろうが人間関係だろうが、だいたいクソみたいな気分になるけれども、人生ってのはそもそもがほとんどそういった繰り返しで、それをやっていかなければ物事は巡らない。 論点を逸らして大声で怒鳴ったり、嘘をついたり、そういったことでは絶対に解決しない。 平野啓一郎の分人主義にあるように

          違う映画にさっさと移れ

          乗客に日本人はいませんでした

          昨日の、新土氏と大田ステファニー氏のXにおけるスペースは良かった。若く、影響力を持つ言葉を使う才能たちが、あれだけの求心力で平和を叫ぶことは希望だ。多くの人々の胸を熱くさせる。行動を起こさせる力もある。私だって、できることはやりたいとずっと、ずっと思っている。し、やってきた。 *** デモに行き、一人でも官邸前に立ち、戦争反対を叫び、SNSでも訴え続けた時代の私を知る人もそれなりにいると思う。数年前から随分とそのようなことを言わなくなったことも、時折人から指摘される。その

          乗客に日本人はいませんでした

          39歳前夜、風穴を開ける

          割とかなりのTMIとして、私の右耳には一つ、左耳には三つピアスホールが開いている。若い頃はそれなりに凡庸に楽しんだけど、今となってはかなりどうでもいい穴で、左耳の上二つは近年もう10年くらい使っていなかった。 両耳にある正規穴は、高校を卒業した時に皮膚科で開けてもらった。田舎ではピアスはヤンキーの象徴であったため、父は一通り不機嫌になった。 左耳にある二つ目の穴は、いつ開けたか全く覚えていない。いつのまにか開いていた謎穴。 そして左耳三つ目の穴は、パリ時代、何もかもがうま

          39歳前夜、風穴を開ける

          公演、すべて降板のお知らせ

          皆様こんにちは。 秋の良いお天気ですね。暑くもなく寒くもなく。本当に良い日です。木陰の風も空気も気持ちいい。 取り留めもないですし、長文なのでご注意を。 要件は、タイトルの通りです。 11/10.11に予定しておりました主宰公演『東京奇譚』延期のお知らせは随分前にお出しし、キャストをはじめ応援してくださったたくさんの皆様にご迷惑とご心配をおかけいたしました。その度は本当に申し訳ありませんでした。 今回、11月、12月に私が演者として出演を予定しておりました各地での全7公

          公演、すべて降板のお知らせ