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2021年3月の記事一覧
【短編小説】ことしの桜
四月二日、金曜日。曇天。
湿ったぬるい空気を引き連れて、電車はプラットフォームに滑り込む。重たい風がぼうっと立ち尽くす私たちの頬を叩いていく。甲高い音と共に電車は止まり、ドアが開くと人の波はゆらりとうごめいた。
あれ?何かが脳みそに引っかかった気がして、私はきょろきょろしながら電車の乗降口に足をかけた。
「だからさあ、ほんっと疲れんの、その子の相手」
「そっか」
つい返事がおざなりになる。
四月二日、金曜日。曇天。
湿ったぬるい空気を引き連れて、電車はプラットフォームに滑り込む。重たい風がぼうっと立ち尽くす私たちの頬を叩いていく。甲高い音と共に電車は止まり、ドアが開くと人の波はゆらりとうごめいた。
あれ?何かが脳みそに引っかかった気がして、私はきょろきょろしながら電車の乗降口に足をかけた。
「だからさあ、ほんっと疲れんの、その子の相手」
「そっか」
つい返事がおざなりになる。