物語が通り過ぎるところ

大きな映画館へ入る

席に座って高い天井を見上げた

客席と高い天井の間には無駄ともいえるほどの広い空間があった

でも

その空間は無駄ではない

無駄どころか映画館にとって最も大切な空間だ

映写機からスクリーンに向けて映画が通り過ぎる場所

愛情や憎しみや悲しみや喜びが通り過ぎるところ

そんな広い空間を見ながら考えていた

空間を英語にするとスペースだ

スペースを日本語にすると宇宙だ

そんなことを考えていると

少しずつ

劇場内が闇に包まれた

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