偶然は降ってくる 雨のようにそして それは夕立のような雨あなたが今いるところから逃げる時間も場所もなかったら、雨は身体を否応なく濡らすだろう 奇跡は路に落ちているでも そう簡単には見つからない四つ葉のクローバーを見つけるようなものでそこら辺には落ちてない見つけるのは「奇跡」的確率だでも 必ず落ちている だからといって一生懸命探しても見つかるものじゃないそれは「偶然」目の前に転がっているものなんだでも転がってても気づかない人気づいても拾わない人そして それに気付いて拾う人
「君は何人か?」と聞かれたら、ほとんどの日本人は「日本人」と答えるだろう。しかし「日本人」である前に「地球人」であり、「地球人」である前に「宇宙人」だ。 しかし逆の考え方もあり得る。「宇宙人」である前に「地球人」であり、「地球人」である前に「日本人」でもあるのだ。 いずれにしろ、「個人」である君が、何に帰属するのか、何に依存するのか、あるいはまったくの「個人」なのか、よくわからない。 ただ「日本人」である前に「地球人」であるという考え方は、(今は完全に悪者となっ
猛スピードで逃げる時の風は気持ちいい。風は前からやってきて一瞬にして身体を突き抜ける。この世界を孕んだ命の風が血管を突き破る。バックミラーに映る倒れた女の姿はみるみるうちに小さくなっていった。左肩にかけたルイ・ヴィトンのバックが風になびいて揺れている。ルイヴィトンの村上隆モデルは白い。白は目立つ色だ。早いところ始末したいものだ。バック自体に興味はない。中身に興味があるのだ。小さい頃、父親が母親に結婚記念日に買ったバッグはルイヴィトンではなくエルメスだった。父親は警察官だった。
タイムマシンがあるのなら、10年前に戻って人生をやり直したい いや、5年前でもいい そんな風に考えながら、後ろを振り向くと そこには、タイムマシンでやってきた10年後の自分が 冷ややかな目で俺を見ていた
夢を見る日もあれば 夢を見ない日もある 脳科学的には実際には毎日夢を見ているのだそうだ 覚えているか覚えていないかの違いとの事 でも、いずれにしろ覚えてない物は見たとは言わない 人は寝ている時に夢を見る 寝ているということは生きていると言うことだ 明日の夜は夢を見るだろうか あるいは見ないだろうか もし見たとしたならそれはいい夢なのか悪夢なのか 今夜死ぬ僕にはわかりようがない
「粋」の反対語は「野暮」だ野暮な人生は悲劇なのかそれとも、喜劇なのか悲劇と喜劇の深層には客観と主観が詰め込まれている客観と主観が溶け合ったその隙間をこじ開けた時本当の悲劇が始まる
愛は時に 憎しみを生むが 憎しみから 愛は生まれない
12月3日。1日目。 今まで人生の中で、2度警察の取調室に入ったことがある。1度目は営利誘拐の参考人として、2度目は強制わいせつの参考人として、もちろん、いずれも任意聴取だ。そして今回が3度目だった。今回は殺人容疑の参考人としてこの取調室に入っている。1度目も2度目もどういう経緯で警察に呼ばれたのかはっきりとした記憶はないが、全く身に覚えのないことだったので、1回の聴取で終わった。もちろん逮捕も起訴もされずに聴取だけで終わった。しかし今回は殺人事件の重要参考人の任意聴取だ。
自由を求めて旅に出た。家族から、社会から、友人から、恋人から、お金から、仕事から、都会から、自然から、辿り着いた先は孤独だった。 完璧な自由は、完全な孤独だ。 そんなこと、初めからわかっていた。 孤独を求めて旅に出た。世界の果ての海の底へ。そして完璧な自由を得た。 自由の反対語は幸福だ。
時間軸で語るとき「前」とは過去を指す。 空間軸で語るとき「前」とは前方を指す。 この不条理な世界で人々は、 前向きになれと声高に叫ぶ。 僕は時間と空間の中をグルグルとまわって「前」を探し続けた。 目がまわって方向性を失った。 そして、自分の立ち位置も、
—根本君のぽたぽた焼き宣言— ある晴れた朝、根本君は原宿の竹下通りを歩いていた。ふと後ろを振り向くとそこにはインド人。れれれのれーっと叫んだ根本君は左ポケットの五百円玉を握り締めて表参道の方へ走って逃げようと思い、右足から順々に歩を進めようとしたがなぜだか足が凍りついて動かなかったのでインド人の額の黒いぽっちが何かを、いや、僕を引き付けたからだなって思った。 貴方は煎餅好きですか?不意に赤茶色の歯茎を見せながらインド人はインド語で問い掛けた。ええ。根本君は納豆のねばねば
「フェラチオしてあげるから1000円ちょうだい」 暗闇から声が聞こえた。 新宿2丁目にある小さな雑居ビルの小さな店の小さなカウンターで俺はジンジャエールを飲んでいた。 小便と汚物の混ざり合った香りに覆われた電信柱の横を曲がると小さな階段がある。人一人がすれ違うのにも苦労するほどの狭い階段を上がると古臭くて重いドアがあり、そのドアを開けたところにその店はあった。 「ねぇ、お兄さん」 聞こえないふりをしてジンジャエールを飲み続けていた俺に暗闇の声は語りかける。偽物の蝋燭
大きな映画館へ入る 席に座って高い天井を見上げた 客席と高い天井の間には無駄ともいえるほどの広い空間があった でも その空間は無駄ではない 無駄どころか映画館にとって最も大切な空間だ 映写機からスクリーンに向けて映画が通り過ぎる場所 愛情や憎しみや悲しみや喜びが通り過ぎるところ そんな広い空間を見ながら考えていた 空間を英語にするとスペースだ スペースを日本語にすると宇宙だ そんなことを考えていると 少しずつ 劇場内が闇に包まれた
特別な存在でありたい感受性豊かな人へ 普通ってつまらない 一人ひとりの個性も見えない あなたがどんな環境で育ってきたのか その生活の中で、どんな性格を創り上げて きたのかは まだ聞いてないけど 私はあなたの 存在 そのものが大好き 居てくれるだけで救われる そんな感じがします
新宿のパークハイアットに呼ばれた時、ヨッシャー! と思った。金持ちの客だと思ったのだ。光量が少しずつ変化するパークハイアットのエレベーターを降りて、眩しい光が差し込む高層階のロビーをすり抜け、本の香りを嗅ぎながら歩き、さらに客室につながるエレベーターに乗る。ジュニアスイートのある階で降り、指定された(ホテルの)部屋のドアを開けた瞬間、本当に瞬間だった。時間が止まった。時間が止まった瞬間、そこには見覚えのある顔があった。そしてまた時間が動き始めた。音が聞こえた。正確には声だっ
誕生日に何が欲しいって言われたんで、ちょっと考えてから「生きる希望かな」って答えたら、納豆をグルグルと混ぜていた彼女の手が止まった。「何かあったの?」と彼女は目を合わせてきた。 「いや、特に何も。まあ、強いて言えば日常かな。毎日続く日常。それは毎日あるよ」 「なるほどね」と彼女は言って、視線を手元の納豆に落とし、初めはゆっくりと、そして少しずつ早くかき回した。グルグルグルグルグルグル。グルグルグルグルグルグル。なるほどねという言葉は多くの場合、人の話を聞いてないときにつ