題名なんて好きにつけてくれ

 新宿のパークハイアットに呼ばれた時、ヨッシャー! と思った。金持ちの客だと思ったのだ。光量が少しずつ変化するパークハイアットのエレベーターを降りて、眩しい光が差し込む高層階のロビーをすり抜け、本の香りを嗅ぎながら歩き、さらに客室につながるエレベーターに乗る。ジュニアスイートのある階で降り、指定された(ホテルの)部屋のドアを開けた瞬間、本当に瞬間だった。時間が止まった。時間が止まった瞬間、そこには見覚えのある顔があった。そしてまた時間が動き始めた。音が聞こえた。正確には声だった。
 「チェンジ」って元カレに言われた。
 物語は始まった。

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