見出し画像

【デジタル室町】

デジタルデータには質量がない。そしてそれを扱う巨大企業が世界を牛耳っている。つまり富の移動に質量が伴わず、ゼロのまますべてが動いていることになる。

そんな状況をすでに室町時代に予見していた人がいた。GoogleもYahoo!もなく、室町と言えばまだパロ・アルトに貧弱なサーバーがあった「足利BBS」しかなかった。そこに貴族階級がダイヤルアップで繋いでいた、テレホーダイ初期だと記憶している。狩野派の絵によくトンビが描かれているのは、この「ピーヒョロヒョロ」のメタファーだと言われている。

その頃「足利BBS」はNORTHとEASTに分かれていた。NORTHのウェブマスターである義満(WM Gee-Man)は「なんつーか、シンボリックでドープなハコが欲しいよね」とBBS上で語り、永楽クラウドファンディングで資金を調達、鹿苑寺金閣というクラブ兼シェアハウスを建てた。

それを横目で見ていた義政(WM YoshiMassa)は「NORTHの田舎野郎は成金臭くてダセえんだよ。やっぱここはシルバーで侘び狙いでしょ」と慈照寺銀閣で対抗する。この辺りでやっとTwitterが登場。YoshiMassaのツイートがGee-Manの逆鱗に触れ、NORTHとEASTは炎上に次ぐ炎上。抗争状態を迎える。

そこに現れたのが元はEASTの論客だった一休宗純(彼は人をもてなすことに長けていて、のちに一休.comというサイトを立ち上げる人物である)。一休はPearlという言語でプログラムされた「真珠庵BBS」を開設し、そこにNORTHとEASTの論客を集め、時代をリードしていく。

世界を動かす質量がゼロであるとはどういうことか。「真珠庵BBS」での議論の成熟は、いつしか無を扱う「禅の境地」に近づいていき、そこに集まった有識者が臨済宗大徳寺派を形作っていく。一休は禅を突き詰めてはいたが、意外に買い物好きなガジェットジジイだった。夢は「南国の密林のように神秘的な室町Eコマースを作ること」

これがシアトルから来ていたネットサービス会社のジェフ・ベゾスの耳に入る。日本で見たクサリカタビラにヒントを得て「カタブラドットコム」というサイトを作ろうとしたが、一休が言っていた密林の神秘さという言葉を思い出し「アマゾンドットコム」に変更した。

一休はリンパが化膿するマラリアにかかり、志半ばで死んでしまう。画期的なEコマースのアイデアはすべてジェフに取られてしまうことになった。臨終の言葉は「死にとうない」である。何が禅の境地なのか。そのまんまやないか。

定期購読マガジン「Anizine」
https://note.mu/aniwatanabe/m/m27b0f7a7a5cd
定期購読マガジン「写真の部屋」
https://note.mu/aniwatanabe/m/mafe39aeac0ea
定期購読マガジン「博士の普通の愛情」
https://note.mu/aniwatanabe/m/m01e843b3acf9

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。