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写真の部屋

人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。
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記事一覧

見えているモノ:写真の部屋

アートは、衝動や発想や熟練や処理といったモノが作り上げているのですが、観る側にはあまり多くのことが伝わりません。見えていない部分の方が多いので、外から見えている最終的な「処理」の話に終始してしまいます。 それが、写真で言えば『使っているカメラやレンズ』の話になります。 写っているモノと写しているカメラ。手がかりはここにしかないので、「花火大会を撮った」「このレンズとカメラで撮った」というトピックばかりになるのです。 何をどんな目的で撮ったのかがわからないと不安になるので

誰も渡れぬ河:写真の部屋

写真というのは100年以上前からほとんど進化していません。フィルムからデジタルに移行する革命も体験しているのですが、写すこと自体は媒体によって何も変わりがありません。写真は湿板であろうが乾板であろうが同じで、小説は万年筆で紙に書こうがパソコンで打とうが全部同じです。 根っこにあるのは「偶然性の排除」だと思っています。ここはかなりのデリケートゾーンなので、一晩かけて精密に話す気持ちがない人とは議論できませんが、『偶然』という表現がもし誤解を招くとするなら、根拠と言ってもいいで

どこでも黒バック:写真の部屋

世界中、どこに行くときにも黒バックを持っています。そこで出会った「その人が持っている情報量だけ」を撮りたいからです。綺麗な風景がバックにあるという写真もいいのですが、私は人にしか興味がないので他のエレメントはできるだけ排除したいのです。その人が働いている場所とか、住んでいる部屋などのようなものはそれも込みで撮ることはありますが、やはり人間だけが美術館の彫刻の図録のように写っていて欲しいのです。 まず、撮る場所を決めます。ライティングをしませんから場所選びがすべてを決めてしま

いい顔採集:写真の部屋(無料記事)

D&DEPARTMENT SEOUL https://www.d-department.com/ext/shop/seoul.html ソウルでポートレートを撮ろうと思っていたのですが、ナガオカケンメイの出版記念トークイベントがソウル店であったので、片っ端から撮りました。みんないい人でした。ありがとう。 I was planning to take portraits in Seoul. I was able to capture photos of some fasci

いつも同じ:写真の部屋

いつどこで撮っても自分の写真は何も変わらないことに気づきます。 知らない街を散歩しながら、おそらく「自分が撮るべきもの」を探しているので、結果が同じになるのも当然だと思います。

ギャンブルの成功報酬:全マガジン(無料記事)

さて、自分にプレッシャーをかける意味で書きますが、『ロバート・ツルッパゲとの対話』の続編を出すことになりました。 『ロバート・ツルッパゲとの対話』(センジュ出版)に続き『カメラは、撮る人を写しているんだ。』(ダイヤモンド社)という写真の本を出したあと、似たような本を書くのはありえないと思っていました。しかし考えてみると、自分が書きたいことを好き勝手に書いたこの二冊の本は、それこそ「私自身を写していた」ことに気づきました。自分が考えていること、好きなこと、嫌いなこと、以外は書

粋と野暮:写真の部屋

写真は、撮影の技術だけで撮るものではありません。地球の環境や生態系保全を考えている人がいて、自分の理想を食事に反映するからヴィーガン料理を作るように、「なぜこの着地点になるのか」が大きな問題です。流行っているからヴィーガン、とかではなく、出発点が大事です。 世の中には無限とも思える写真がありますから、自分が撮る一枚には自分が写っていなければ無意味です。私はそこを「粋と野暮」という基準で判断しますが、これもまた好みの問題です。全員が自分だけの基準を持てばよくて、そこには正解な

カメラと写真:写真の部屋

たとえばこれを「何かの仕事の写真」として使う場合、HasselbladのH5Dで撮ったか、SONYのRX100m7で撮ったのかは誰も興味がありません。

重要な情報:写真の部屋

自分の職業が「趣味」としても成立していると面倒なことが起きます。たとえばレントゲン技師とか配管工などは、それを趣味でやる人がいないために仕事に関する話題は専門分野以外に広がっていきません。しかし写真はそうはいきません。「僕はこういう配管をやっています」と言っているような話題で溢れかえっているからです。国家資格があるタイプの仕事は輪郭がはっきりしていていいですね。弁護士や医師のように。 私が検索をしたり投稿をすることで、判断力の鈍いAIが写真に関するトピックをどんどん表示して

6分間の写真:写真の部屋(無料記事)

SONYのRX100m7をいつもポケットに入れています。さっき近所のコンビニに行ったときに撮った、6分間の写真をアップしてみます。 まず、仕事場を出てエレベーターに乗るとこんな貼り紙がありました。 ショーウィンドウのディスプレイというのは「ディスプレイデザイナーの作ったビジュアル」なので、これは写真というより複写ですね。 静岡では39℃を記録したほどの暑い日でしたが、急に空が曇り、光の当たり方がフラットになっています。この感じが好きなのでだいたい撮ります。 外国から来

ソウルへ:写真の部屋

朝から晩までただひたすら知らない人の写真が撮りたくなったので、久しぶりのソウルに行ってみることにしました。今日、新宿の都庁で新しいパスポートを受け取ったので素早く10日後の航空券をとり、東大門のホテルをキープ。前のパスポートが6月末までの有効期限だったので旅行の予定を立てられなかったのですが、これで遊びでも仕事でも10年間は安心です。 旅に行くとそのままの勢いで写真展や写真集に仕上げてしまう写真家がいますが、私にはそんな素早い動きはできませんし、あらかじめテーマを決めたうえ

永遠のワナビー:写真の部屋

TwitterやFacebook、instagramなどのソーシャルメディアは、ある程度自分がフォローした人を目にしているのでそうは思わないんですが、noteやThreadsはランダムにおすすめが出てくるので閉口します。知らなくていいことを目や耳の中に詰め込まれる感じ。同様の理由でトレンドやニュースサイトなども見ません。 そこで感じるのは、自分が信じる宗教とは違う人たちの存在です。写真の部屋なので写真の話をしますが、「写真とは何ぞや、どれ、私が教えてやろう」というおじさんた

ショート:写真の部屋

視点がふたつ以上あると「面白い風景」だと勘違いします。ですからカメラを持った最初のうちは、水面、ガラス、鏡などの『反射』を撮りがちです。

雨の日:写真の部屋

雨の日にしか撮れない写真を。今日はクルマのタイヤがあげる水しぶきを撮ってみました。別に何の目的もないですが、面白いので。 シャッターは水滴を止めるために1/2000秒くらい。 練習写真なので、コントラストを少し変化させただけでレタッチなどはしていませんが、撮りながら黒いクルマがいいのか白がいいのか、前輪か後輪か、路面の黄色い車線は写った方がいいのか、などを探っていきます。こういう訓練をしておくと、もしも似たようなビジュアルを撮って欲しいと依頼されたときに、一から考え始めな