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中年と若者の皆様へ:Anizine

負け惜しみではなく、歳を取るごとに毎日が楽しくなっていく気がしています。日本では、と書き出すとまた外国との比較かよ、と嫌がる人もいると思いますがやはり日本の「若さ信仰」は世界的に見て異常だと感じます。

年長者を敬えとかいうのとは違うのです。年齢を重ねたなりの楽しみを謳歌している人のことを理解していないだけだと思っています。若いことのアドバンテージがあるのはわかります。私もこう見えて20代の頃がありましたから。そのときに思っていた「老いへの恐怖」が実は根拠のないものだとわかってきたのは50代に入ってからです。まずは仕事。若い頃は、どうしてこんなに一生懸命やっているのにいい結果が出ないのだろうと年功序列の理不尽さに文句を言うこともありました。

しかしそうではありませんでした。若いというのは未熟だということで、それを自覚していない状態なのです。誰でもポジショントークというか、自分が今いる場所を基準に世の中を見ています。若いうちは「大人たちは若い自分たちの頭を押さえつけている。彼らは若さに嫉妬しているのだ」という考えに支配されていました。でもそれはまったくの勘違いだったと自分が歳を取った今、わかりました。

おじさんたちは張り切った若者が好きです。たいした経験も無く、財力も人望もない、白紙の分厚いメモ帳みたいなやつらを可愛いと思って眺めています。こちとら書き込みだらけのメモ帳は、情報量はあるのですが、もう新しい何かを書き込むスペースがありません。答えはすぐに出すことができます。データベースが無尽蔵ですから。しかしそれが足枷になります。色々なことを体験して知ってしまっているからこそ出ない答えもあるのです。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。