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幅跳びと三段跳びの違い。

30年くらい仕事をしているのに、いまだに「ああ、こうすればよかったのか」というトンマな発見がある。

会社にいた頃はアートディレクターをしていて、フリーになった頃はCMの演出をやっていた。それからまたデザインに戻り、なぜか写真の仕事を始めた。この三つは「時間の使い方」がまったく違っている。

アートディレクターはとにかくひとつの仕事の拘束時間が長い。まだ商品さえないうちから会議が始まり、実際の撮影やデザインを経て、その後の軌道修正やランニングの管理にも関わる。

CMディレクターは「こういうCMを作る」と決まってからの現場仕事だけで終わることが多く、カメラマンはさらにその一部分にだけ関わる。

「全体像がわからない状態で何かを頼まれてもやりにくい」というスタンスなので、写真を撮るだけの仕事にしても、できるだけ早い段階で関わることを心がけている。そうしないと「撮影する商品はとてもいいのに、この部分が悪い」などと文句を言わずに済む。

角田さんと一緒にプロデュースに参加させてもらっているミュージシャンのmeiyoなどは、俺が芸名をつけ、アー写も撮ったから彼の今後の活躍には言い逃れができない責任を持っている。「よく知らない若いミュージシャンの写真を撮ったよ」というのはいくらでも数をこなせるから仕事の効率はいいだろうけど、俺は面白くないと思っている。

関わる拘束時間が違うと言ったけど、優秀な人はどんな分野でも想像できないほど多くの仕事をしている。何か一つやったことをずっと言い続けている人からは、ちょっと古い言葉だけど「シナジー」を感じない。

これをやっている途中に、次の仕事ではこうすることを思いついた。それを足したら今度はこうなった、というような効果。断続的な一歩を繰り返していると最初の一歩は常に小さいものだけど、走っているとだんだん歩幅が広くなっていく、あの感覚だ。

途中で足首をひねったり、変なところに着地したりすることもあるんだろうけど、そんなことはどうでもいいから気にしない。幅跳びの距離と、三段跳びの最後とでは飛距離がまるで違う事実だけを重視する。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。