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カメラは水平に:写真の部屋

本の中で、差別についての話を書きました。写しているものに憧れたり蔑んだりしないという意味で、撮るときにカメラを水平に構えることの大事さ。

ある写真家が外国に撮影に行った印象を「汚い街だった」と表現しているのを見たことがあり、とても残念な気分になりました。誰かが住んでいる街のことを外から来た人が綺麗だとか汚いと感じることの意味とは。こうして考えてみると実は「綺麗だ」と感じるときにも差別は生まれていることになります。

カメラは撮っている人のことを写している、というのが今回の本のタイトルになっているのですが、まさにそこが一番大事なところだと思っています。写真を見るとき、何が写っているかではなく、「なぜこの人はそれを撮ったのか」の方が大事だということで、撮る人の知性が試されています。本の中では、知性と写真とどう関係があるのかをしつこく解説しているのですが、わかりやすいくだらない例を挙げるなら、男性のカメラマンが女性を撮ったとき、その人がモテるかどうかが残酷なまでにわかってしまうということです。知性という言葉だけでは厳密さを欠きますが、シャッターを押す人の意図が全部写っているということです。

始めてニューヨークに行った人が撮る写真と、そこに30年暮らしている人が撮るものとは違いがあります。その違いこそが『写真』の本質であり、見つめる人の目です。東京やニューヨークに来た観光客は必ずカメラを上に向けて撮影しています。ビルを撮ろうとするからです。しかしそこに住んでいる人は日常を生きていますから高層ビルのことなど忘れていて、水平な目の高さで街を見ています。これが「体験と経験の多さ」につながっているのです。

多くの体験と経験を持つ人は、見えているモノに対する精度が違うということで、その人があえてビルを見上げて写真を撮ろうとしたときは、観光客とは違うモノが写るということでもあります。

だからこそ!

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写真の部屋

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人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。