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明かりを求めにいくこと。

10年以上前。結婚式に呼ばれ、初めて山形の駅に降りた。

駅前通りの突き当たりに立ちふさがるように山が見えたことになぜか感動したのを今でも憶えている。東京に住んでいると山が見える場所までは遠い。都会を抜けてしばらくしないと高い山は見えてこない。

山形が夏は暑く冬は寒い盆地であることも、地理の教材としてわかりやす過ぎるほどに実感した。

ホテルでの結婚式が終わって二次会に行った。ずっと忘れていたが、今思えばそれが「七日町」だったのだとわかる。

その結婚式に出ていた岩井さんと知り合い、彼の仕事場が西麻布なのに数年間も東京で会うことがなかった。会ったのは偶然ハノイの空港で、そしてまた山形だ。その縁で、2014年の山形ビエンナーレに参加させていただき、2016年のビエンナーレを観に行き、2017年のドキュメンタリー映画祭にも参加した。

山形の魅力はベタに言ってしまえば「人」に尽きる。奥ゆかしくシャイでありながら、言葉少なくやって来た人をもてなす。あれを食え、これを食っていけ、というのが東北のもてなしだというのは父親の故郷である福島で知ってはいたが山形もよく似ている。

山形、米沢、酒田など、今では同じ山形県として一つにくくられているが、それぞれの文化、言葉や食べ物も大きく違う味わいがある。

何を書いているのかと言えば、行ったことがない人はぜひ山形を訪れて欲しいということだ。俺が何度も行く街は「人が優しく、食べ物が美味しい」というわかりやすい基準なんだけど、Parisや台北と並んで山形は大好きな街だ。

新幹線の駅を降りれば「アニさん」と声をかけられ、タクシーのおじさんは何度も乗ったことがある人で、喫茶店のお姉さんたち、カフェ、大学、今ではどこにでも知り合いがいる。

生活している場所とは別の街にも自分の居場所があるというのはとても素晴らしいことだと感じる。Parisや台北に行った初日には地元の人からいつも「お帰りなさい」と言われる。

すべてにおいて100点の場所なんてなくて、ここがイヤだけど、それを補うための場所なら他にあると思えることは幸いである。

「暗いと嘆くより、自ら明かりをつけましょう」という聖書かなんかの言葉を聞いたことがあるけど、旅をすることは「明かりを求めにいくこと」だと思っている。

だから、どこかに行って「あそこは面白くなかった」という印象を持ったことは過去に一度もない。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。